2008-06-16

旅人でない特権を

@Grassi Lakes/ Canmore


東京で降る雨は、コンクリートの匂いがした。

ここで雨が降ると、木々が草花が、いつもよりも濃い匂いを発する。もわぁっと、むせかえるような森の匂いが鼻を突く。ゴアテックスのレインジャケットさえあれば、雨の森を歩くのは、決して嫌いじゃない。

はるばる日本から遊びに来る人たちが、「ああ、せっかくのカナディアンロッキーなのに・・・今日は雨で残念だ」と思うのではなく、雨だからこその森の香りに気づいて、積極的に楽しんでくれたら、いいよね。

しかも、私が「雨もいいですよ」と言うのではなく、その人が自分でそれに気づいてあげられるよう方向づけてあげられるのが、(短い間だとしても)この場所で生活する者の役割だ、と思う。





「街なら、絶えず襲ってくる雑音を無視しなければ、頭がおかしくなってしまうが、ここだと山林の当たり前の音しか聞こえてこない。余計な自己防衛がいらない。むしろ積極的に耳を開き、敏感になってもいい。

目の前にヒシめく建築物に遮られず、めまぐるしい動きに邪魔されない。いつでも広い空を眺め、視線をはるか遠くへやる、ゆとりがある。ものの色や香り、際だつ昼の明るさと夜の暗さも味わえる。

抽象的な言い方かもしれないが、「五感を開いたまま」でいられるのが、ここでの生活の目に見えない最大のよさだと思う」  ---イーデス・ハンソン



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