2008-09-23

熊さんどうぞ  /Yukon2008


1日漕ぎ疲れてキャンプ場に到着し
重たい荷物を船から降ろし何度も往復してキャンプ場へ運び
カヌーをよっこらせ、とひっくり返し
さあ、今日はどこにテントを張ろうかと

ようやくほっと一息ついたそのときだった。

真新しいdigging(=グリズリーはその長い爪(・・・つまり熊手ですね)を使って土を掘り起こし、中にいる草の根や虫を食べる。diggingはその掘り起こした跡)と

まだホカホカさが伝わってくるような、食べたのはクランベリーだねと簡単に把握できるような糞をみつけてしまったのは。



「6人以上のグループで、熊に襲われたというデータはない。今回は14人もいるんだから気をつければ大丈夫・・・だよね?」という考えが、全員のチラリと頭をよぎったのは事実だ。 認めよう。

・・・だって、もう頭の中は、本日もお疲れ様さあ冷たいビールで乾杯!な気分なのに、もう一度カヌーをヨッコラショとひっくり返し、荷物を詰め直し、疲れた腕に鞭打ってこぎ出すのは、考えるだにやっかいじゃないか・・・、


でも、糞を目の前に、みんなに語ったJoeの言葉は、そんな柔な気分を一気に吹き飛ばしてくれた。

「Into the thin air (邦題:「空へ」)の話を知っているかい?史上最悪のエベレスト登頂後の大人数遭難死亡事故。あのとき、 頂上に立った時点での写真が残っているのだけれど、今みると、背後に、明らかによくない雲がちゃんと映っていて、何でこんな気象条件なのに無理して登ったんだろう、という議論があるんだ。

僕たちは、diggingと糞をみた。しかも真新しい。このサインを見逃してはだめだ。自然に対して謙虚さを忘れ、奢った瞬間に、しっぺ返しはくるもんだ」



私たちは、1時間下流のキャンプ場に移動した。
夜7時半、ようやく、この日の、diggingも糞も、何のbear signも見あたらない、ゆっくり眠れそうな寝床を見つけたのだった。


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