2008-06-30

裏山恐るべし


Mt.Lady Macdonald 2605m, Canmore


うちの裏山。
玄関出て3時間後に、この景色がこの岩肌が待っているとは!
ふふふ。



カナディアンロッキーのガイドブックの載せ方は偏りすぎだ。ガイドブックには紹介されていない地味な場所にこそ、この場所の醍醐味があるのでは、と、滞在1ヶ月にして思い始めた。この魅力を、さて、どうやって伝えればいいだろう?

ヤツはいきなりやってきた


カナディアンロッキーの夏は、ある日突然やってくる。
日本の梅雨明けの空のように、前触れもなく、突然に。
前日まで、寒い寒いと布団3枚かけて寝ていたのに
昨日、いきなり、ギラギラした太陽とともに夏がやってきた。

肌をジリジリと焦がす太陽光線、カラカラと乾いた空気に抜けるような青い空、ハイビジョンテレビ顔負けのくっきりと輪郭を持った木々の梢。

おおおお。
ビールだビール。

日本から届いた念願の双眼鏡を片手に、庭のハンモックに揺られながら、バードウォッチング・ビールの夕方午後9時。


短い夏は楽しく幸せに忙しい。

水の住人

Common Loon @ Pyramid Lake, Jasper NP, Canada

朝はいいなあ。
動物の気配がむんむんと濃い。

ルーンの優雅な泳ぎに見とれていると、遠くでエルクがクォーーーーンと鳴いた。

2008-06-25

岩の住人・3

Hoary Marmot @ Stanley Glacier, Kootenay NP, Canada


1日中でも岩に同化して、気配を消して、彼らの生態を観察していたいほど。
が、仕事中につき、そうはいかないキビシイ現実。

岩の住人・2

Hoary Marmot @ Stanley Glacier, Kootenay NP, Canada


「我が岩穴(=うち)に寄ってく?」と、手招きされた。いや、ホント。

岩の住人・1

Hoary Marmot @ Stanley Glacier, Kootenay NP, Canada


この地に来て、野生動物たちにワンサワンサと出会う。毎日毎日。

2008-06-24

夏至の涙

@Mount Revelstoke NP, B.C. Canada

「朝陽と夕陽に輝く山々の写真を撮りたい」と、お客様は希望を出す。が、北の国のしかも夏至の日、それは、なかなか難しいご希望ですぞ。




山を越え谷を越え、ロッキーの西、ブリティッシュ・コロンビアにやってきた。

雨上がりの午前中、雨粒を受けた新緑まぶしいレインフォレスト。乾いた土地、ロッキーから降りてくると、木々が発する濃い匂いに咽せそうになるほどに、この場所は、森全体が瑞々しい。


(あ、あと、オカナガン・ワインが美味しい)

2008-06-18

錯覚

Bow lake @Banff NP


南の島・・・カリブ・ケイマンの海も、確かこんな色だった。
でもここは氷河湖なので、熱帯魚はいないよー。

手軽に

Bow glacier falls trail @Banff NP


駐車場から散歩気分で1時間。
という気軽さで、氷河の麓に辿り着ける。

Wapta ice fieldを臨む

伝える・伝わる

メモです。



「コミュニケーションというのは、要するに何かを伝えることだけど、その前提として、ひょっとしたら伝わらないかもしれない、と思うことが大事だって、本で読んだことがある。ひょっとしたら伝わらないんじゃないか、みたいな気持ちがあれば、じゃあどうすれば伝わるんだろうと考え始めるわけだよね。

・・・宝石のデザインというのも、コミュニケーションだと思うんだ。自分のデザインで、見る人や、お客さんに何かを伝えるわけでしょう。だから、奇をてらうっていうか、変わったデザインで、単に目立っても、意味がないんだよね。この指輪は変わってるねって言われるために、デザインしているわけじゃないんだからね。

この指輪はきれいだとか、この指輪は魅力的だね、って言ってほしいわけだから、自分がデザイン的にやりたかったことが伝わらないと意味がないわけ。

相手に伝わらないと意味がない、それがすべてだと思うな」


2008-06-17

たんぽぽうまい

Bow Valley Parkway (Highway 1A) / Banff NP


たんぽぽを無心に食べ続ける雄エルク。望遠レンズないので撮ってないけど、この10分前にグリズリー母子が、やっぱりたんぽぽを食べていた。

バンフからレイクルイーズに抜けるには、高速道路Highway1 と、旧道(側道)の選択肢がある。ほとんどの観光バスは、高速を使う。が、野生動物に会いたければ、時間の流れのゆっくりな、この旧道をぜひとも走るべし。

湖畔にて

Bow glacier falls trail @Banff NP

駐車場から1時間も歩けば、人気のない世界に入ってしまえるその手軽さが、この場所の魅力のひとつかなー。人気はないが動物気が増える。



一緒に歩いた同僚の、写真のセンスにヤラれました。

2008-06-16

無駄ひとつない

Elk @Banff NP


エルクのアントラー、むにょむにょ生えてきました。夏だ。



「アントラー」な種類の角は毎年生え替わる、という話はこの間書いたが、その続き。


1mもの立派に育った角を、なぜ毎年落とす必要があるのだろう。そのままキープしておけばいいのに?

と、そういう疑問をひとつひとつ丹念に調べる毎日を送っているinterpreter見習い(=私)なのだ。そりゃもう、脳みそ刺激されまくりの面白い毎日。(貧乏生活だけど)


さて、角。
人間の男性は、気になる女性にどうやって自分をアピールする?

お金を使って裕福さを示す?雑誌で研究したカッコいい服?鍛え上げられた厚い胸板?溢れ出る教養と知識?(・・・ええっと、私の場合は、その人の内面に入っていきます。向上心・慎み深さ・自分を信じている強さを持った人がいいです。あ、そんなこと聞いていないですね。はい。)


人間なら、いろんなアピールのしかたがあるのだろうが、ここ厳しい自然界では、「健康で強い」という指標しかありえない。ひ弱なオトコは嫌われる。

が、あいにくエルク社会には、健康診断してくれる病院がないので、自分の角で、「今年どれだけ俺が健康で頑丈で強くて大きいか」を誇示する必要がある。そう、角はオスエルクの健康診断書。メスは、その角をみて、「ああ、この人の子供なら産んでもいい・・・」とヨロめく。

なるほどなるほど。

では、落ちた角は、いったいどこに消える?エルクは、ここではメジャーな動物で、バンフやジャスパーのキャンプ場では、しょっちゅう見かける。あれだけの数の角が毎年落ちていたら、このあたりの地面は角だらけじゃないの?

犯人は齧歯類。彼らが、この落ちたツノをガリガリと囓り、貴重なカルシウム源としている。




おおおお。
す、すごくない!???

自然界には無駄なことなんてひとつもなくて、全部のできごとには必要性があって、全部が微妙に絡み合って、きれいに循環しているんだ。

このエルクの話だけじゃなく、たとえば、夏冬生え替わる羊の毛は、リスが「羽毛布団」として巣に持って帰るだとか、カタクリと熊とアリの三角関係、とか、山火事がおきないと種が発芽しないロッジポール松とか、豊かな土壌を作り出すビーバーダムとか、もしかして、今まで私が知らなすぎなのかもしれないけれど、美しいくらいに、無駄なく関連しあって、この地球という惑星は成り立っている。

「熊すごーい」
「ビーバーかわいいー」
「この花きれいー」
「山高いー」

だけじゃなくて、その裏を知れば知るほど、目の前の自然は、ストーリーをもって鮮やかに動きだす。


カナディアンロッキーという、世界遺産でカナダ最初の国立公園を職場にしている今は、この生態系の絡み具合を、毎日肌で実感できてしまうのだから、

より深く知りたくて、勉強に熱が入って、つい睡眠時間が減ってしまうのも、まあ、しかたない、よね。





夏のロッキーも秋のユーコンも、今年は、今までよりももう少し深く旅できる気がします。自然の声を聞きに、ぜひ遊びにきてください。

6-8月 カナディアンロッキーを歩こう
8/16-23 アシニボイン・バックパッキングに挑戦
8/30-9/6 紅葉のユーコン北極圏へ

旅人でない特権を

@Grassi Lakes/ Canmore


東京で降る雨は、コンクリートの匂いがした。

ここで雨が降ると、木々が草花が、いつもよりも濃い匂いを発する。もわぁっと、むせかえるような森の匂いが鼻を突く。ゴアテックスのレインジャケットさえあれば、雨の森を歩くのは、決して嫌いじゃない。

はるばる日本から遊びに来る人たちが、「ああ、せっかくのカナディアンロッキーなのに・・・今日は雨で残念だ」と思うのではなく、雨だからこその森の香りに気づいて、積極的に楽しんでくれたら、いいよね。

しかも、私が「雨もいいですよ」と言うのではなく、その人が自分でそれに気づいてあげられるよう方向づけてあげられるのが、(短い間だとしても)この場所で生活する者の役割だ、と思う。





「街なら、絶えず襲ってくる雑音を無視しなければ、頭がおかしくなってしまうが、ここだと山林の当たり前の音しか聞こえてこない。余計な自己防衛がいらない。むしろ積極的に耳を開き、敏感になってもいい。

目の前にヒシめく建築物に遮られず、めまぐるしい動きに邪魔されない。いつでも広い空を眺め、視線をはるか遠くへやる、ゆとりがある。ものの色や香り、際だつ昼の明るさと夜の暗さも味わえる。

抽象的な言い方かもしれないが、「五感を開いたまま」でいられるのが、ここでの生活の目に見えない最大のよさだと思う」  ---イーデス・ハンソン



2008-06-15

日常のこまぎれ贅沢

@Canmore 家からオフィスまでの通勤路

夢だった。

通勤の時に、心をシャットアウトして乗車率300%の電車に乗ったり、ひっきりなしに通る自動車にヒヤヒヤしながら自転車を漕いだり、さわやかさの欠片もない夜の廃退した匂い残る歌舞伎町を歩いたり、というのは、東京っ娘には、避けようのない日常だ。通勤とは、そういうものなのだから。

でも、だからこそ、どこか遠くにでかけることなく、非日常の旅の時間でなく、日々の生活の小さな時間のなかで心動く風景のなかに身を置いていたいというのは、ここ数年、思い描いてきた夢だったのだ。

それが今、手元にやってきたじゃないかー。


新雪かぶった眩しい雪山の稜線が、
荒々しい石ころがいかにも山の上流らしい清流が、
日々新しい野花を咲かせる道端が、
風に気持ちよさそうに身を任せるアスペンの葉が、

オフィスまでの15分の通勤路。



というわけで、コロンビア氷河やレイクルイーズやモレーン湖やペイト湖といった観光地の景色より、毎日のこのあたりまえな贅沢さを、貴重に感じてしまう、カナダ生活3週間目。



Five hundred twenty-five thousand six hundred minutes
How do you measure a year?

In daylights
In sunsets
In midnights
In cups of coffee
In inches
In miles
In laughter
In strife ・・・

1年という時間、
あなたはどうやって数えてる? 

 Seasons of love   /Rent


カナディアンロッキーの持ち物リスト

@Peyto lake, Banff NP

荷物の多さと重さに負けて、迷った上に望遠レンズを日本に置いてきたのは、痛恨のミスだった。あと、双眼鏡・・・。ここは動物天国。

しかも、この、Peyto湖を見下ろす絶景の岩の上で昼寝しているマーモットと出会ったときは、コンパクトデジカメしか手にしていなかった始末、ときた。

青色七変化

@Vermilion lakes, Banff NP

ここカナディアンロッキーは、山じゃなくて水の国だと思う。オーロラが毎回違うように、湖が映し出す水の色は、場所により天気により時間により、同じ色になることがない。

2008-06-10

大地に流れ星


そういえば、最近、夕焼けを見ていない。夜空をみていない。
北緯51度の夏至間近の空は、夜10時すぎてもまだまだ明るいのだ。が、星はある。

ここでは、星は、空でなく、足下で咲き乱れているのだった。「流れ星」草。遠くには、クライミングのメッカ、ヤムナスカ山。



<本日の一夜漬け>

▲Shooting Star
サクラソウ科、高さ10-20センチ、6-7月、湿気のある平地を好む。

2008-06-08

ツノの年輪


 ▲ @BANFF NP /JUN08


「我々が「角」、と呼んでいるモノには、実は二種類あって、英語では、ホーンとアントラーと言います。エルクやムースのツノはアントラーで、毎年生え替わります。逆に、ビッグホーンシープのツノはホーンで、一生同じものです。だから、大きさを見れば、年齢が分かるんですよ。」


と、まあ、昨日仕入れた知識を、100年前から知っているかのように自信ありげに話すペテン師が、ガイドという職業です。でも、直接話のできない動植物の生態を知っていくというのは、より森を山を深く見ることができそうになりそうで、苦労しながらも楽しいオベンキョウライフです。




新しい場所にくるというのは、今まで積み上げてきた、ゆっくりと伸ばしてきたはずのツノが見えなくなる瞬間が、ふと訪れる。自分の無力さに心折れそうになるのは、きっと、さっきから降り始めた雪のせいで、憂鬱な空の下、気持ちが弱っているのだろう。
でも、エルクのアントラーは、毎年数ヶ月で、立派に大きくなるのだ。大丈夫。私の心も、また明日になれば、ムクムクと太陽に向かって伸びていくと思うので、きっと大丈夫。

2008-06-06

昼寝するならこの場所で


▲カナディアンロッキーで一番高いロブソン山の麓、キニー湖畔で昼寝中の相棒ヒロ。気持ちよさげすぎ。



「カナデァンロッキーって、つまり山と湖がたくさん、でしょ。レイクルイーズとコロンビア氷河でしょ」、というあなた(=それは3日前までの私)へ。

いやいやいやいや、ここは、そんな簡単な場所じゃない、みたい。トレイル全部歩いたら1000年くらいかかる、みたい。コロンビア氷河に観光客は集中してもらっておいて、その背後には広大な自然(でもアラスカより整備されていてキモチ安心な)が広がっている、みたい。日本のガイドブックでは、そんなこと、全然教えてくれてない、みたい。




仕事シーズンが本格化する前に、ダッシュで、バンフ国立公園とジャスパー国立公園とクートニー国立公園とロブソン州立公園、下見してきた。3日間の走行距離、900キロ。バンフからジャスパーまでというのは、つまり東京から名古屋間に相当する距離を、ずーっと3000m級の山に囲まれてドライブする、って、右にも左にも登ってみたい山が次々登場するって、どんな場所なんだ、ここは!

しかも道中、ブラックベアーとムースとエルクとビッグホーンシープとマウンテンゴートとポーキューパイン(はりねずみ)とパイカとリスに出会った。次々と。出し惜しみナシ。

大興奮のまま、先ほど帰宅。







・・・ガイドブックに書いていないカナディアンロッキーを、自分の足を使って楽しんでほしいので、1本企画立てました。

「街からは見えないアシニボイン山の麓でバックパッキング体験 8月」 

祝・今年も秋はユーコン川の上


地球探検隊・大人の修学旅行
「カナディアンカヌーで下る秋のユーコン川160キロ」

催行決定、というか、残席あと1名となりました。
ありがとうございます。
パチパチ。


今年も1週間、極北の原野の中で新しい仲間11名と過ごすことができる幸せを噛みしめる。黄金色に色づいたアスペンが、シャラララン、秋だよ秋だよ、って楽しそうに歌うのですよ、この場所は。

しかも、ガイドは、ユーコンの男、ジョー。毎晩、彼が奏でるギターの音色が、ユーコン川に響き渡る幸せな夜を過ごせるのだ。

ジョーの名言
「秋はもうすぐそこまでやってきているよ」




紅葉のユーコン企画はもうひとつ。
北緯66度の北の大地で、できたてシナモンロール(たまに砂入り)を食べたい人を募集中

2008-06-03

窓の外には


あら、
あっというまに6月だ。

ビザを無事取得した後、初めての街・初めての職場・初めて会う人たちに刺激され、右往左往しながら、毎日疾走している。そう、長距離走をしているかのような、この気分。ほっと一息つく間もなく、ここ10日間くらい、毎日、息は切れないがギリギリのペースで走り続けている。

カナディアンロッキーの歴史・地学講習受けたり、スタッフトレーニングは(仕事柄)当然のごとく建物の一室でなく外に出てキャンプしたり、やったーキャンプだと喜んでいるのもつかの間、トレーニング中に雹が降っていて道を間違え先輩に指摘されたり、ベアスプレーを買いに行ったり、無限にあるトレイルを把握するべく地図をそろえたり、宿題出されて「ロッキーの動物と環境」を調べるべく図書館に半日籠もったり、と、

毎日が矢のように過ぎていく。

家の窓の外に、電柱じゃなくてロッキーの山が、「でーん」と聳えている景色を満喫するヒマすらないのだ。家から徒歩2分のところから始まるトレイルを走りに行けるのは、いつの日か。オフィスまでの通勤路・徒歩15分・川沿いのトレイルを毎日感動しながら歩いている事実を、ここにゆっくり記せるのは、いつの日か。



そういうわけで、ふと気がつくと、

ハセツネに申し込みそびれた

・ユーコン・カヌーツアーが残席4になっていて、しかも、このカヌーのツアーは、大好きなギター弾きガイド・ジョーが一緒に旅してくれることになっていた

北極圏を踏む旅は、去年同様、NOLSインストラクター、ジャンが来てくれることになった

と、日本の状況も少しずつ嬉し悲しく動いていて、

そう、夏はきっと、駆け抜けて行ってしまうから、この貴重な太陽の日々を、ここため息つくような自然広がるカナダの山の中(山=アシニボインの麓)で、これを読んでくれている人と共に過ごせたらそれはどんなに幸せだろう、と思う今日。







明日からジャスパーへキャンプしに行ってきます。