2009-04-10

背中は語る

犬橇旅のおもいで

1.
川が高速道路だとするならば、旧街道のような趣あふれるのが、森の中。

ひょろりとしたスプルース、葉っぱのないアスペンの森の中を走るトレイルは、左右はふかふかの新雪で、そこに無数に点けられたウサギ・リス・ムース・・・といった動物の足跡。足跡があるから、ではなくて、木々のざわめきの隙間から聞こえる鳥の鳴き声を聞くから、ではなく、その森の中の空気すべてが、生き物の気配で充ち満ちている、あの濃い空気感を走り抜ける時間。


2.
カーブ続く、見通しの悪い緑の森の中を1時間走り、突如やってきた急な坂を駆け下りたあとに

パァァーーーーーーーーアアアッ

と、一瞬にして視界がすべて開け、ユーコン川の上にでた瞬間。空の青と川の白、遮るもののない、上下2色の世界に躍り出た、あの瞬間の爽快さ。


3.
キャンプの夜は、オーロラも・・・、まあ、みた。見えた。

でも、「オオカミ出るから、夜トイレに行くときは気をつけて」と言われたそのキャンプ地で、テントでなく外で、橇の上で寝袋にくるまって眠ったあの夜は、

すぐ隣に、一緒に旅してきた犬たちの寝息と気配があるなかで、安心してユーコンの大地にくるまれて眠ったあの夜は、

オーロラ見るよりも、地球を感じた夜だった。


4.
高速道路(川の上のトレイル)を自転車のスピードで安定走行しているときの犬橇は、流れゆく景色を楽しむには最高の時間(これは、カヌーの上でのんびりしているときに近い感覚。)

そう、春分を過ぎ、夏に向かって動き出す力強い春の景色を楽しめる最高の時間なのだが、それでも、一番見ていたのは、今回の写真のように、犬たちの背中、だ。

「うっひょー、今日も雪の上を走るのは楽しいねぇ」
「いい天気だしねー。少し暑いけど」
「あ、私ちょっと疲れてきた・・・かな・・・」
「え、おまえサボってんなよ。ライン弛んでるだろ」
「(後ろ向いて)、あ、僕、うんこしたいかも。あ、あ、橇止めて~」


という会話に耳を傾け、背中を見ている時間が、

今回の旅の、一番の思い出。

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