2009-09-02

景色が人を詩人にさせる


さて、アラスカの氷河カヤックツアーに話は戻ります。

ツアーの後、アンケートをもらうのですが、全員が、「旅の感想は、今どうしても書けないので宿題にしてください」と言って、紙を白紙のまま渡してきました。 本当に圧倒される景色にであったとき、すぐには言葉にならない、というのは、自分も経験あること。

忙しい日常生活に舞い戻ったメンバーから、それでも時間をつくって書いてくれた感想が届き始めたので転載します。

アラスカの景色は、誰をもロマンチックな詩人にさせてしまうのですね。
素敵な感想ありがとう!



●タロー(男性)

ズドォォォォーン…
寝袋の中で眠りながら聞いた、あの音が忘れられない。

都会暮らしの自分には、不自然にすら感じてしまうほどの、完璧な自然がそこにはあった。

小さな港町から船で3時間。そこが今回の旅の滞在地。船は2日後に迎えに来てもらう約束で帰って行く。文字通り何もない浜辺でのキャンプ。あるのは、海、森、空,それと崩れ落ちる氷河、それだけ。

そこで、一日中、カヤックを漕いで、氷河を求め、旅をする。
ラッコやアザラシと同じ目線で、ゆっ~くり。
自分の漕ぐ水の音と、水面でとける氷河のパチパチという気泡の音だけを聞きながらゆっ~くり。

自分が水面ギリギリに浮かんでいるんだから、その小さな音もひとつひとつ聞こえる。

そして、時折聞こえる氷河の崩れる音。
ズドォォォォーン…

自分がそこにいるのが、明らかに、場違いな感じ。
お邪魔してます、って感じてしまうほどの神秘的な自然だった。

目の前で、そびえ立つ氷河が崩れた瞬間。
崩れた氷河のかけらにカヤックが囲まれた瞬間。
こうしている間も、あの場所では、あの音が聞こえているはず…。



●ゆうこりん(女性)

朝起きると昨日と同じ氷河が目の前に広がっていた。

波の音、鳥の声、風の音、滝の流れる音、誰かが私のテントの前を砂を踏みしめてザッザッと歩く音、自然界の音以外は何も聞こえない朝。

これは夢なのか幻なのか、目が完全に覚めて、現実の朝だと分かるまでの数分間の至極の時間が永遠に続いて欲しいと思った。

圧倒的な大自然の前に言葉を失って、ただただ茫然と立ち尽くすというのはこういうことなのか。
言葉を発するとその時から現実が始まってしまうのが惜しくて、しばらくの間、大自然と私一人の感覚を味わった。


テントを出て、浜辺の中央に目を向けると、もうすでにBread とG が朝食の用意を始めている。

ここには満員電車に揺られて疲れ果てた顔をした人は誰もいない。みんなが幸せな笑顔で朝を迎えて、サンドイッチとコーヒーを飲みながら、他愛もないことで笑い合い、今日1日のアクティビティの話をした。

ふと目を上げると、正面の氷河が「遠いところからよく来たね、いらっしゃい」と言ってくれているような気がした。

No comments: