2009-09-30

凶悪な顔をした雲が(Mt.Decoeli登頂記5)

@Kluane NP, Yukon Canada

それにしても、風が強いのだ。
ブルーベリー林を超え、無事「熊問題」からサヨナラしたと思いきや、今度は、「風問題」勃発だ。


ただでさえ、山の中で、本当に本当に一人きりとなり、微妙に心細いところに、この、容赦なく吹きつける強風といったら、唯一露出している頬をみるみるうちに冷やしていく。頬とともに、一生懸命、気合いで灯し続けている、心のなかの小さな勇気という名の「明かり」も冷えてきて、心がそのままポッキリ折れそうになるくらい、風は相当に強い力で、私に向かってくる。

風がやってくるその方向に目を向ければ、ぐるぐる渦巻く凶悪な顔した雲が、西の山にべったりと張り付いて、この自然の中ではあまりにもチッポケな私とテントを見下ろし、あざ笑っていた。


寝ている間にテントが吹き飛ばされないよう、大きめの石を集めて補強しながら、数日前、ソロ登山家tomoと話した会話を思い出す。

「雨よりも雪よりも、風が嫌いだ」と言う私に、「そうかな。僕は好きだよ。風は、powerだから。遠くから、powerを運んできてくれるんだ。エネルギーの源、という感じがするな。」

ああ、tomoさん、やっぱり全然パワーの源じゃないよ、エネルギーを私から吸い上げる犯人だよ、この風は・・・、と、すっかり弱気になり、早々に、寝袋にもぐりこむ。



遠くで、マーモットが、キュゥー、と甲高い声で一声鳴いた。

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