2010-05-07

夏の終わりのヒグラシの鳴き声を聞いた(西伊豆秘密基地キャンプ)



伊豆はその昔大昔、ハワイみたいに島だった。
プレートに乗っかって動いてきて
ぐぁーんと日本にぶつかって、
その衝撃で丹沢山脈ができたとさ。

・・・丹沢はさておいて。

伊豆はだから、陸続きでも外国なんだ。
その証拠に
山の植生が、東京のそれとは全然違う。

シダ。
ガジュマルみたいな木。
たった1ヶ月
たった1ヶ月しか経っていないのに
GWの森は、南国だった。

季節外れの大雪が降ったばかりの3月末。
控えめな山桜の淡い淡い桃白色に染まった森は

1ヶ月後のGW、
もりもり
もりもり
と様々な緑色に膨らんでいた。

ぷちぷちと生命の息吹が空中に浮かんでいるのが見える
息苦しささえ感じる
西伊豆の原生林がつくりだした木漏れ日のトンネルをくぐり抜けること2時間、

のんびりと時間を決めずに歩きながら
うまくいかない仕事のイライラとか
うまく衣替えができておらず片付いていない家の中のどうしようもなさとか
手帳に書いてはみたものの達成できそうにもない to do list とか

頭の中をぐるぐる回る小さな悩みを少しずつ捨てながら歩いて
腕時計も捨て去って
心の中にぽっかりと空白ができた頃到着する
西伊豆の秘密基地。

1ヶ月ぶりに会うこの秘密基地の主は
やあやあいらっしゃい、久しぶり、と
もう夏を終えたかのように真っ黒に日焼けした顔で
わたしたちを迎えてくれた。

乾いた喉を麦茶で潤して
一足早い
夏休みの始まりだ!

わーい!


夜中。

ふだん寒いところでばっかりキャンプする私は
暑さで目が覚めておどろいた
シュラフから這い出てお腹の上に掛け直してもう一度眠ってみるが
黄色いテントの生地の向こうから存在を主張する
朝5時の太陽光線に負けまたすぐに目を覚ます。

5月って、春じゃないぞ
もう夏なんだ


朝9時。
蒸し暑さに耐えかねて
目の前の海に飛び込んだ
(思いがけず今年はじめての海水浴だ)

ぷっかり
ぷっかり
波間を気ままに漂いながら
キャンプ場を振り返って気がついた

「1日一組限定のプライベートキャンプ場」と謳っているこの秘密基地
貸し切りなのはキャンプ場その場所だけじゃない

要塞のように森と崖に囲まれた東西北のこの空間すべて
リアス式海岸の奥にあるこの海すべて

二次元じゃなくて三次元の世界を独り占めしている
贅沢、ぜいたく。

空気をいっぱいお腹に吸い込んで
水面に仰向けになってみる。
水分をたっぷり含んだ重たい空はくすんだ青色
トンビがピョロローとひと鳴きして、その空をまっ二つに切り裂いた。


キャンプ場からの帰り道
茜色に染まった西の空を車窓に眺めながら
終わってしまった時間が恋しく
胸がきゅーんと寂しくなる

うっかりと日焼けしてしまった腕と背中のヒリヒリが
痛いけれど嬉しくて

耳の奥で夏の終わりのヒグラシの鳴き声を聞いた気がした


あのむっちりと濃い27時間1泊2日の時間は
いくら語ったって伝わらない
伝えられない

だからこそ
一緒に共有してくれた
7人のオトナコドモな参加者のみんな
ありがとう!


「第一回 大人の秘密基地キャンプ」
ちゃんとした報告書は ここ

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