エイドは(地元名産の)トマト、トマト、トマト |
スタートとゴールのシンボル大銀杏 |
幸せな景色広がる |
夏に大荒れした伊南川 |
Oct.2011, Minami-Aizu, Fukushima, Photos by Kenji-san |
足が象なみに浮腫んでるゾウ。
週末、100キロを自分の足で移動した。
100キロ。時間でいえば13時間。
日の出前の朝5時から日の入り後の夕方5時57分までの間ずーーーーっと、17箇所のエイドで、水分と食糧を摂取するために立ち止まったのと、トイレに4回立ち寄ったのを除いて、足を前に前にと出し続けた、ただひたすらに。コースは、合計1600mの標高差があるので、6キロの登山道と、10キロのダラダラ峠越え登り坂は歩いたが、あとの84キロは(すごくゆっくりだけど)走った。
私だけじゃない。世の中にはそういう遊びが好きな人たちが少なからずいて、今回、福島の南(栃木と群馬と新潟の県境い、または尾瀬国立公園の北の入り口)、会津の伊南川沿いに100キロを16時間以内で移動しようよ、というイベント「伊南川100kmウルトラ遠足」に、北は北海道から南は佐賀県まで、私をふくめ、先週末、282人の物好きが会津に集合。
ブログ更新久々の今日は、100K感想&完走記です。
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70キロ以上走る/歩く大会(イベント)に出るのは、2007年のOxfam Trail Walkerを皮切りに、今回で7回目。普段は、ふかふかの森の中が好きなので、全体の94%がアスファルトの上、という条件は初めてだが、100kmという距離感覚は、もう体が覚えている。
100キロは、決して近くはないけれど、思っている以上に遠くもない。
焦らず、自分の走力を見極めたゆるいペースで進めば、意外と疲れずに人は前へ進めるものだ。最初から飛ばさず、持てる力を抑えて抑えていくこと。普通の走る大会は「なるべく少ない時間でゴールする」という前提があるけれど、この世界は、「制限時間内に完走」という前提で参加している人も少なくない。そう、目標を「制限時間ぎりぎり」にして(今回は16時間)、疲れきって足がうごかなくなる前に、途中、歩いたり、エイドで長めに休憩したりすれば、思っている以上に、ゴールは遠くないし、体への負担も少ないし、多分、もっとウキウキと楽しい。
事実、60キロのエイドで「足が動かない〜」と弱音を吐く私をみて声をかけてくれたオジサマは、「まだ1時。あと40キロ進むのに、ゴールの制限時間まで8時間使えるから、もう走らなくても大丈夫だよ。1時間に5キロ進めばいいんだ」と励ましてくれた。だから、リタイアせずに、ゴールして美味しいビールを飲みなよ、と。(このユルユルな雰囲気が、ウルトラマラソンの特長。)
たしかにそうなのだけれど、歩いてしまうのは自分の中で「負け」な気がして、どうしても歩けないのだ。やっかいな性格だが、これが自分なのでしょうがない・・・。
夏の間ほとんど走っていない身体(6から10月の総走行距離は、たぶん200キロくらい)で、一度に100キロ走り続けるのは厳しいのは分かっていた。案の定、20キロ過ぎたあたりで早々に足裏や膝や股関節や腰や肩や腕・・・が、順番にストライキを起こし始め、痛みという形で私にブーイング信号を送ってくるけれど、そんな体の悲鳴は無視、無視。
25キロ地点で途中リタイアを妄想し、
65キロ地点で、布団に寝転がって安らかに眠る自分を夢想し、
70キロ地点で、まだ30キロも続くこれからの道のりを想像して気が遠くなり、
80キロの地点で、道路にいたヘビに驚き50センチ飛び上がって、膝の筋を痛めながらも、
折れそうな気持ちを叱咤激励して、ゆるゆると走りつづけた。
88.6キロの第16エイドを通過したのが午後4時45分。計算していたよりもずっと速かった。
エイドのグァバジュースを口に含みながら、あれ、あと11.4キロを1時間15分で走れれば、もしかして午後6時までにゴールできるかも?、と朦朧としてきた頭で計算する。12時間台でゴール、って、ぷぷぷ、悪くないんじゃない?
一旦意思を固めれば、人は強い。
88キロを走り続け、ギシギシに動かなくなったはずの足は、再びスムーズに、1キロ6分のスピードで動きはじめる。1キロ毎に腕時計をにらみながら走り続けること1時間10分、村のシンボル、大銀杏の木の下のゴールへ、午後5時57分、到着。
気持ちが一気に緩んでヘナヘナと地面に倒れ込む私に、スタッフのフミさんが、キーンと冷えたビール缶を渡してくれ(ここでビール、というあたりのユルさも、ウルトラマラソンっぽい)、長い長い1日は終わった。
あんなに走っている間は辛かったのに、意思が肉体を凌駕した(←大げさ)最後の1時間10分の記憶が麻薬のようになって、私は、また走っちゃうんだろうか。
普段、ラクな方にラクな方にと、うまく手を抜く術を覚えたツマンナイ大人な毎日に、自分の限界ギリギリのことをやって喝を入れ、あ、意外と私はまだまだ頑張れる、と頭でなく身体全部で感じられる瞬間が癖になり、走るのを止められないのだろうか。
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以前、誰かが、100キロは「旅」だ、と言っていた。
車や列車の早さでは見逃してしまう景色と空気感を、時速7、8キロで流れ行くスピードで感じられる旅。その意味で、13時間、私は会津を味わい尽くした。
速すぎず遅すぎず、絶妙なスピードで視界を流れ行く、深い山合いにひっそりと佇む日本の原風景のような村。ブナやカラマツの原生林、いろんな植生が幾重にもなって生み出す錦色の紅葉の山並みと、アクセントに現れる渓谷。目を閉じれば今も脳裏に浮かぶ、奥会津の風景が愛おしい。
疲れた体をほぐしてくれた、鉄分たっぷりの赤い温泉、
お世話になった民宿のおばあちゃんの、あったかいお人柄と会津弁、おじいちゃんが「まあ飲めや」と注いでくれた地酒、
新米コシヒカリのつややかさと舌の上にのせたときの甘さ
地場の食材をたくさんつかった美味しいエイドの食事
人があまり通らない、ひっそりとしたトレイルに降り積もる落ち葉のふかふかさ・・・
話題の福島は、目に見える心で感じられる世界は、こんなにも穏やかで平和で素敵な場所で、それを感じるからこそ、目に見えないものに怯えないといけない事実に、胸が痛い。
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伊南川100kmウルトラ遠足データいろいろ:
●走る場所
100キロ、550mから1700mまで、合計1600mの標高差。
うち6.4キロは尾瀬国立公園内のトレイル。
●旅の間のごはん:(合計17カ所のエイド食)
トマト、トマト、トマト、塩、たくさんのトマト。(トマトはこの地の名産品)
リンゴ、オレンジ、レモン、バナナ、梅干し、おにぎり、豚汁、ハム、焼き肉、花豆、あんぱん、カシューナッツ、カステラ、クルミ黒砂糖、お菓子類、飴類。
水、麦茶、スポーツドリンク、レモンティー、ココア、昆布茶、コーラ、グァバジュース、サイダー、生ビール
●いただいたお土産(参加賞):
Tシャツ、手ぬぐい、トマトジュース、岩魚の甘露煮、杉の間伐材でつくった割り箸、和菓子
●受付場所で見かけた地元の美味しそうなもの(沢山買った)
トマトジュース、米、味噌、赤かぶやゼンマイの漬け物、花豆、梅干し、梅の甘露煮、和菓子、日本酒。
●つかったお金
16000円の参加費と
13000円の2泊分の宿泊代と
8000円の交通費と
おみやげたくさん
●10月の月間走行距離のグラフ・・・、いびつ過ぎて笑える。
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こういうMっ気のあるイベントは、一人では気持ちが萎えるので、友人知人を誘います。誘った人がまた人を呼び、今回も、わいわいガヤガヤ。あの辛楽しさを一緒に笑い飛ばしてくれた皆様、楽しい時間をありがとうー。
ウルトラ初挑戦のPOEの女性陣
park、裸足断捨離ランナー やまだ氏
http://blog.park-komazawa.com/?eid=11Think the earthケンちゃん(取材同行。写真ありがとう)
http://www.thinktheearth.net/
親父弁当のヨシナリくん、まさかの実況中継
http://dpz06.cocolog-nifty.com/100k/
1 comment:
トマトが嫌いな人は参加出来ませんね。
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