2008-04-08

判断する力


と、まあ、そういうわけで、
久々の猛勉強の末、昨日、無事に合格証を手に入れ、桜すでに散ってしまい花見のチャンスを逃した東京に戻ってきました。

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Wilderness context...
Any occation when transport to a hospital level facility will take more than two hours.

今回勉強した「野外救急」の、「野外」の定義は、「病院に運ぶまで2時間以上かかる場所」。私が携わっているアラスカやカナダやアメリカの大自然の中では、(いや、奥多摩だってそうだし、災害があれば都市部だった同じ状況なのだが、)そんな場所がほとんどで、

そんな場所でサルに噛まれて血を流している人、倒れて意識のない人、ハチに刺されアナフィラキシー症状が出た人、凍傷になった人、産気づいた人・・・に出会ったら(または自分がそうなったら)、今まではオロオロするだけだった。

都市化された自分は、オフィスで仕事をする代わりに、他の「生きる力」は全部お金を出して外注するのが当たり前になりすぎていた。そんな自分が大自然の前に立てば、あまりにも無力だ、と気づいたのはいつのことだったろう。そして、その無防備さを思うと呆然となるのだ。

今回取得したWilderness First Responder という資格は、日本では多分全然知られていないけれど、でも北米でアウトドアに関する仕事に携わる人間にとっては最初に求められる基本的なものなので、今夏カナディアンロッキーで働く自分は、必要に迫られて受講した、という面もあるが、

それよりも、多分、都市に去勢されすぎている自分を補正するために、つまりは、エプロンフリフリのパン教室に通ったのと同じような理由で、今回の知識を、「状況をみて自分で判断できる」だけの知識を、身につけたかったのだと思う。

「極端な話、骨の名前も怪我の名前も病気の名前も覚える必要はありません。それは、医者がすることです。でも、目の前で苦しそうに倒れている人をみて、その人が、「どれだけすぐに」病院にいくべきか、「命に関わる可能性はどのくらいなのか」、を、推測できるようになってほしい」、というインストラクターの最初の言葉。

そして、実習中は、「何でその処置をしたのか」「そう思う理由はどの症状をみて判断しているのか」が、繰り返し問われた。ただ一つの正解は存在しない代わりに、判断する力を徹底的にたたき込まれてきた。



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そして、ひとつ自信をつけて戻ってくると、友人の日記にこんな文章が。
この一冬、アラスカ荒野に生きる男たちに弟子入りしていたワカメちゃん(女性)が、彼らから言われたのだ、というこの一言は、アラスカが教えてくれた大切な芯の部分を、思い出させてくれたので、ここにも載せておきます。 街に生きる人に、こんな瞬間を感じられるような旅が提供できたら、という想いと共に。

「You gotta take care of yourself because we can't take care of you.

"自分の面倒は自分でみるんだ。人に頼ったら自然に負けるから。 アラスカを好きなら、ここにいたいのなら、君に知ってほしいこと。 複雑ではないよ。自分と自然、それしかないとき、とてもシンプルだ。生きぬくこと、この大地の中で生き抜くこと、それしかないんだ。自分と自然の間に隙間がなくなって、自分が確実にその一部であると知るんだ。"」



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