キャンプ最終日。月齢11。(満月まであと4日。)
日が沈んでしばらくたって、ようやく地平線から顔を出した月光が、ユーコン川に一筋の線を描き出す。
冷え込んできたし、そろそろ温かな寝袋にくるまれたいのに、もうすぐ終わってしまう原野の静かな時間が愛おしく、テントに入るタイミングが、なかなか掴めない。
今年はなかなか現れてくれない、気まぐれなオーロラを諦めつつ、でもまだ少しだけ期待しつつ、焚き火で暖をとりながら、静かに、静かに、夜はしんしんと更けてゆく。
寒いし面倒くさいから、と、忘れたふりをしていたけれど、そろそろガマンの限界を超えた私は、しぶしぶトイレに立ち上がって、焚き火の前を離れた。
用を済ませて
遠くから焚き火の輪を眺めてみれば
月の青白く柔らかな光、
小さな焚き火の橙色に照らされた仲間の顔、
アコースティックギターが奏でる「500マイル」の旋律と
急遽ドラムの役目を仰せつかったクーラーボックスが鳴らすリズムは
耳ではなく直接腹に響いてきて
即興のコンサートに、岸辺のアスペンの木々が
さわさわ ざわざわと拍手を送る。
ああ、こうやって言葉に紡ごうとしても
あの、本当にシンプルでそして深い時間は
書けば書くほど指の間から逃げていくような
もどかしく
説明の難しい瞬間なのだけれど、
原野のなかで5日間過ごしてきて少し鋭くなった感性は
じわじわと涙腺に働きかけてきて
ああ、こんな少しのものだけで
人間はここまで温かく豊かな気持ちになれるのだなあ、と
幸福感で体全部が幸せに満たされてしまい
密かに、私のなかでの旅のハイライトとなったのだった。
*
おおぅ、ギター始めたい。
1 comment:
海外のキャンプファイヤースタンダードナンバーは今でもPPMなんですね。
私が10数年前にメキシコに行った時、ツアーメイトが"American Pie"を弾いてくれました。
またあんな夜を過ごしてみたくなり、最近ウクレレを始めました。
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