誰にも教えたくない究極の秘密基地へ寄り道
見渡す限り何もない原野にひっそりとたたずむ
滑走路&素朴なキャビン&温泉小屋
先客は一組
「アリゾナに自家用飛行機を持ち、今回は3ヶ月かけてアラスカの空旅をしている上品なオーストラリア人飛行家夫婦」(世界にはこんなカッコイイ金持ちがいるのです!)
*
到着後すぐにキャビンから見えた白い黒熊
川沿いに群れをなすジャコウウシの喧嘩に息をのみ
双眼鏡越しに見るカリブーの雄の角の完璧な形に見とれる
ふかふかのツンドラの原野を気ままに歩き
その大きすぎる距離感がどうしても脳内で認識できず
いつまでもいつまでも辿り着けない目指す丘の頂上
歩き疲れたら
やわらかなツンドラの上にごろりと気ままに寝転がり
ズボンをブルーベリー色に染めながら
手当たり次第にその小さく紫色の大地からの贈り物を
口に放り込み喉を潤す
あまりの心地よさに
グリズリーへの緊張感をふと忘れる瞬間
手元のベアスプレーを目にして気を引き締めた
丘を越え
清冽な流れのクリークを飛び越えると
この日初めて現れた太陽のきらきらした光の下で
アラスカンコットンの白い綿毛が風に揺られふわふわと笑っていて
釣られて私も笑顔
3時間の散歩のつもりがいつのまにか9時間に
止むことのない北風が
もうこれ以上は無理というくらいに頬と手を冷やした頃
キャビンに戻り
少し熱めの天然掛け流し温泉でからだを温める
温泉小屋の小さな窓から
仔カリブーがキャビンの近くに迷い込んできたのを見守った
夏の終わり でもまだ
なかなか訪れない夜を闇を
ずいぶんと溜まった日記をつけながら ゆっくりと待つ夜11時
圧倒的な静けさに押しつぶされそうになりながら
昼間、先住民村で分けてもらった脂ののった鮭トバを肴に
飛行機の厳しい重さ制限のなか、一瓶だけ持ってきたウイスキーを
シエラカップに少しだけ注ぐ
アラスカの女神様
最高に贅沢で幸せな1日を
どうもどうも
ほんとうに
ありがとう
*
キャビン室内の壁の落書きには、ブッシュパイロットShaun Luntのサインも。
2008年、33歳で操縦する飛行機墜落事故で亡くなったこの人の写真は、一見の価値あり。と、先客オーストラリア人夫婦が興奮気味に絶賛してました。
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