2009-12-10
骨折でも捻挫でもいいんです (WAFA)
PROP, STOPEATS, RICE, SAMPLE, SOAP, AVPU, CPR, MOI, TBI, TIP, VS, ASR, ICP, ...
知っている人には懐かしい、分からない人には訳の分からない呪文のようなこの略語(abbreviations, acronyms)の数々が、本を読んでいても走っていても、常に頭の中をぐるぐる回る今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
先日、縁あって、今、日本で行われている、WAFA(Wilderness Advanced First Aid)講習の手伝いをしてきました。今日はそのお話を。(医療用語の訳は、ハードル高かった・・・。)
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WAFAのもう一つ上、80時間の講習が必要なWFR(Wilderness First Responder)は、北米のアウトドア業界で仕事しようとしたら、真っ先に要求される資格で、だから興味を持って取得した、というのもあるが、もとを正せば、最初のきっかけは、手の骨折だ。
数年前、ハイキングのレベルのその先を楽しむようになったばかりの、ヒヨッコ・アウトドア人間(私)は、知人の「沢登りいくよー」という誘いに、「はーい」と、二つ返事で、何も知らぬまま、何も持たぬまま、その楽しそうな、「道じゃなくて今日は川を歩くらしい」遊びに、ひょこひょこついていった。場所は奥多摩。
途中経過は長くなるので省略するが(手に汗握るストーリーなので、聞きたい方は直接お会いしたときに!)、結果としては、滝に登れず、横の崖を登ったその瞬間に見事にゴロゴロ転げ落ち、骨折し、道に迷い、一晩、寒さに震えながら夜が明けるのを待つ、という、「都内OL、奥多摩で遭難!問われる登山者の自主的な危機管理」と週刊誌にタイトルつけられそうな、典型的な遭難事故(の一歩手前)を体験したのだった。
今考えると、あれが開放骨折でなくてよかった、骨折が足じゃなくて手でよかった、ヘルメット被っていてよかった、時期が夏で暖かくてよかった、脊椎損傷がなくて本当によかった・・・、と、ただただ「無知な私を、神様見捨てないでくれてありがとう」と感謝したくなるが、
(ギプス1ヶ月で)痒く痛い右手と、なかなか完治しない全身の痣が教えてくれたのは、「東京にいたって、救急車が呼べない場所はある。これ以上、自然のなかに深く入って遊びたいなら、自分の身は自分で守れ~」という事実。
楽しい遊びは、要求されるものも多いのだ。
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ウィルダネス・ファースト・エイドが、日本の赤十字や消防署の教える「救急法」と決定的に違うのは、「すぐに医療機関に搬送できない場合」という条件のなかでの対処法、という部分。119を押せば数分で救急車が来てくれない場合(大自然の中、災害時・・・)、傷病者を、死なさず、状況を悪化させず、どのくらいの緊急度をもって、緊急避難(evacuation)させなくてはいけないかを判断する、その「判断する力」を教えてくれる講習なのだ。
たとえば、骨折の固定。「そこにあるものを使い、要求を満た」せばよいので、日赤の美しい三角巾巻き方講習の先生たちが見たら卒倒するような巻き方でも大丈夫。テントポール、マット、ストック、服・・・、血の流れを止めず、患者が楽な姿勢で、怪我した部分がきっちり固定されていれば、その項目は合格。
骨折、と書いたが、医者でない私達にとって、その怪我が骨折か捻挫か脱臼か、どんな名前の怪我であるかは区別できなくてよい。必要なのは、「その部分は、怪我によって、もう使えないの?まだ使える?」「この状態は、ヘリコプターで搬送するべき?一刻を争う?」かを判断できる力。
(日本人の考え方の癖?として)、きっちりとした正解がほしく、「このケースは、このやり方で合ってますか?」という質問が飛ぶと、答えは常に、「It depends。状況によります」。
傷病者役、救護者役に分かれて何度も繰り返される実習でも、聞かれるのは「何故あなたは、そう判断したのですか?」という考え方の部分で、それが、論理だったものであれば、処置が他の人と違っても、合格となる。
インストラクターが、「人間のからだは、何よりもよくできた精密な機械です。車の故障はバンパーを開ければいいけれど、人間は・・・、たとえば頭蓋骨は、簡単には開けて見ることはできない。でも、いろんなサインを出してくるから、そのサインを読み取れれば、故障箇所と状態と緊急度がわかるのです」と、初日に力説していた一言が、印象的だった。
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WAFAは、4日間で受講可能。からだのサインを聞けるようになること、何が命に関わるのかの「判断基準」は、知っておくと、万が一の時にとても安心して対処できるので、山に行く人たちはもちろん、街で生活する人たちも、知っておいて損はない知識、ぜひぜひお勧めしたい講習です。
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4 comments:
“都内OL”と掲載されたかどうかは、甚だ疑問だ…。
ところで、evacation→evacuation。
「緊急避難」のスペルを間違えているようでは…。
ふーむ、興味深いアプローチ方法だな。判断する際のcriteriaは「死なないこと」?
evacation → evacuation
都内OL → 都内美人OL
でいいですか?
判断基準は、「理想と現実の見極め。現状を悪化させないでALSへ引き継ぐこと」かな?
おっ、40hrsの講習の助手ですね!いいですねー!nbも来年はRecert.する予定です。Ryokoさんは日本でします?それとも、こっちに来た時しますか?
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