2009-10-02
風が起こしてくれた夜(Mt.Decoeli登頂記12)
2009-10-01
from the peak (Mt.Decoeli登頂記8)
無風、快晴、ひとりきり
緊張感と開放感にアドレナリンの興奮をプラスした
独特のこの感覚のなかで
1時間歩いては1時間休憩し
30分歩いてはまた1時間休憩し
下から沸き上がる雲に少しおびえて
次はまた1時間歩く
ベースキャンプから半日で往復できる距離を
丸一日かけてゆっくりと歩いた
山脈の奥にはローガンがそしてアラスカが
ここまでおいでよと手招き
いくら見続けても見飽きない景色が360度広がっていて
途中からカメラを取り出すことすら忘れてただ見入る
途中からカメラを取り出すことすら忘れてただ見入る
岩と雪だけの無機質な世界を彩るかのごとく
時折ワタリガラスがコロコロと歌いながら通り過ぎてゆく
青色絵の具を溶かしたかのような完璧な空を
非情な飛行機雲がまっ二つに引き裂き
山の彼方へ消えていった
「人生って素敵だね」
ここに来る前に会話した友人とのことばを反芻しながら
引き裂かれた空を見上げ寝転がる
autumn to winter (Mt.Decoeli登頂記7)
ぬくもりある寝袋から出難く一瞬躊躇うが
肉体的欲求が(トイレいきたい)と
脳にスルドク訴えかけくるその
本能の声に逆らうことはできず
テントから這い出してみれば
昨晩の強風は
この谷に冬を一気に運びこみ
たった一晩で、季節は移り変わっていた
見事なくらいに冬がそこにいた
山の稜線の向こうから
ようやく顔を出したあたたかな太陽が
視界すべてをオレンジ色に染め上げ
凍り付いたツンドラの大地を私を
じわじわとでも着実に
とかしてゆく
霜の降りた大地はやわらかな光を受け
辺り一面本当に一面すべてがキラキラと輝き
凍り付いた夜から目覚め
ざわざわと息を吹き返し始める
ああ、これが私がつかみ取った景色
今年いちばんに美しい時間
寒さも
尿意も
息をするのも忘れて
ただただ呆然と立ち尽くす
2009-09-30
朝の月 (Mt.Decoeli登頂記6)
誰もいなくて何もない、
頼れるのは本当に自分だけ、という大自然のなかで
一晩過ごすと
自分の息づかいと大自然の鼓動が徐々に重なっていき、
覚悟をした、ということなのか、自分の弱さを受け入れた、ということなのか、うまく説明はできないのだけれど、いつのまにか、「恐れ」は「畏れ」へと静かに変化し、心は、波ひとつない鏡のような湖面ほどに、しん、と静まりかえっていた。
しん、と静まりかえったのは私の心だけでなく、外の世界も同様で
朝、目覚めると
昨晩、私を恐怖に陥れた風は見事にぴたりと止んでおり
圧倒的な静けさのなか、
昨晩より一層白く雪化粧した山肌と
群青色の空に光る一筋の月が
おはよう
と、優しく微笑んでいた
凶悪な顔をした雲が(Mt.Decoeli登頂記5)
それにしても、風が強いのだ。
ブルーベリー林を超え、無事「熊問題」からサヨナラしたと思いきや、今度は、「風問題」勃発だ。
ただでさえ、山の中で、本当に本当に一人きりとなり、微妙に心細いところに、この、容赦なく吹きつける強風といったら、唯一露出している頬をみるみるうちに冷やしていく。頬とともに、一生懸命、気合いで灯し続けている、心のなかの小さな勇気という名の「明かり」も冷えてきて、心がそのままポッキリ折れそうになるくらい、風は相当に強い力で、私に向かってくる。
風がやってくるその方向に目を向ければ、ぐるぐる渦巻く凶悪な顔した雲が、西の山にべったりと張り付いて、この自然の中ではあまりにもチッポケな私とテントを見下ろし、あざ笑っていた。
寝ている間にテントが吹き飛ばされないよう、大きめの石を集めて補強しながら、数日前、ソロ登山家tomoと話した会話を思い出す。
「雨よりも雪よりも、風が嫌いだ」と言う私に、「そうかな。僕は好きだよ。風は、powerだから。遠くから、powerを運んできてくれるんだ。エネルギーの源、という感じがするな。」
ああ、tomoさん、やっぱり全然パワーの源じゃないよ、エネルギーを私から吸い上げる犯人だよ、この風は・・・、と、すっかり弱気になり、早々に、寝袋にもぐりこむ。
遠くで、マーモットが、キュゥー、と甲高い声で一声鳴いた。
Subscribe to:
Posts (Atom)