2008-06-16

無駄ひとつない

Elk @Banff NP


エルクのアントラー、むにょむにょ生えてきました。夏だ。



「アントラー」な種類の角は毎年生え替わる、という話はこの間書いたが、その続き。


1mもの立派に育った角を、なぜ毎年落とす必要があるのだろう。そのままキープしておけばいいのに?

と、そういう疑問をひとつひとつ丹念に調べる毎日を送っているinterpreter見習い(=私)なのだ。そりゃもう、脳みそ刺激されまくりの面白い毎日。(貧乏生活だけど)


さて、角。
人間の男性は、気になる女性にどうやって自分をアピールする?

お金を使って裕福さを示す?雑誌で研究したカッコいい服?鍛え上げられた厚い胸板?溢れ出る教養と知識?(・・・ええっと、私の場合は、その人の内面に入っていきます。向上心・慎み深さ・自分を信じている強さを持った人がいいです。あ、そんなこと聞いていないですね。はい。)


人間なら、いろんなアピールのしかたがあるのだろうが、ここ厳しい自然界では、「健康で強い」という指標しかありえない。ひ弱なオトコは嫌われる。

が、あいにくエルク社会には、健康診断してくれる病院がないので、自分の角で、「今年どれだけ俺が健康で頑丈で強くて大きいか」を誇示する必要がある。そう、角はオスエルクの健康診断書。メスは、その角をみて、「ああ、この人の子供なら産んでもいい・・・」とヨロめく。

なるほどなるほど。

では、落ちた角は、いったいどこに消える?エルクは、ここではメジャーな動物で、バンフやジャスパーのキャンプ場では、しょっちゅう見かける。あれだけの数の角が毎年落ちていたら、このあたりの地面は角だらけじゃないの?

犯人は齧歯類。彼らが、この落ちたツノをガリガリと囓り、貴重なカルシウム源としている。




おおおお。
す、すごくない!???

自然界には無駄なことなんてひとつもなくて、全部のできごとには必要性があって、全部が微妙に絡み合って、きれいに循環しているんだ。

このエルクの話だけじゃなく、たとえば、夏冬生え替わる羊の毛は、リスが「羽毛布団」として巣に持って帰るだとか、カタクリと熊とアリの三角関係、とか、山火事がおきないと種が発芽しないロッジポール松とか、豊かな土壌を作り出すビーバーダムとか、もしかして、今まで私が知らなすぎなのかもしれないけれど、美しいくらいに、無駄なく関連しあって、この地球という惑星は成り立っている。

「熊すごーい」
「ビーバーかわいいー」
「この花きれいー」
「山高いー」

だけじゃなくて、その裏を知れば知るほど、目の前の自然は、ストーリーをもって鮮やかに動きだす。


カナディアンロッキーという、世界遺産でカナダ最初の国立公園を職場にしている今は、この生態系の絡み具合を、毎日肌で実感できてしまうのだから、

より深く知りたくて、勉強に熱が入って、つい睡眠時間が減ってしまうのも、まあ、しかたない、よね。





夏のロッキーも秋のユーコンも、今年は、今までよりももう少し深く旅できる気がします。自然の声を聞きに、ぜひ遊びにきてください。

6-8月 カナディアンロッキーを歩こう
8/16-23 アシニボイン・バックパッキングに挑戦
8/30-9/6 紅葉のユーコン北極圏へ

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