▲Dawson Trail, Yukon, Canada 03/2010
2010年の年明け、1月1日は満月だった。
月は29.5日周期で満ち欠けを繰り返しているから、その月の最初の日が満月なら、月の終わりにも再度満月はやってくる。この、ひと月の中で2回目にやってくる満月のことをブルームーンというのだそうだ。3−5年に一回だけやってくる珍しい現象。
さらに、1月にブルームーンがある場合、2月は28日で終わってしまうから、3月に再度ブルームーンはやってくる。だからどうしたと言われればそれまでだけれど、そんな些細な事実が嬉しい私なのだった。
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3月の最初の満月(ファーストムーン)の夜、私は仕事で極北ユーコンの大地に立っていた。翌日から始まる犬橇でのキャンプに向けて、小さなキャビンで過ごす1日。
東京に暮らしていると、ビルで空は覆われており、街灯で月の明かりはかき消され、分刻みのスケジュールで「忙しさ」に絡めとられてしまった日常生活のせいで、月の満ち欠けなんて気にすることなく毎日が過ぎていく。下手すれば、その日の天気すら知らずに1日は建物の中で終わっていく。
だからこそ、この特別な夜を、大好きな極北の大地の上で、150匹の犬たちの遠吠えを聞きながら月光を満喫できるなんて、なんて素敵な偶然だろうと、密かにご機嫌だった。
雪の白は光を反射するから、森のキャビンへと続く道は驚くほど明るくて、ヘッドライトなんてなしで十分に歩ける。それはほのかに明るい、なんてレベルではなく、たとえば自分の影は、くっきりと雪道に映し出されているほどの光量で、自然と、月の存在、太陽の存在に感謝する。
なーんて話を、ツアー参加メンバーにうるさくしたつもりはないけれど、2度目の満月を迎えた3月終わり、ヤスコちゃんがこんなコメントを寄せてくれた。
「 今、高台のマンションの窓から満月が見えます。月が遠く街のネオンと、近所のお墓を照らしてます。3月二度目の満月、帰国して最初の満月。涼子さんが、ユーコンで『3月はもう一度満月がくるよ』と言っていたのがずっと頭にあり、今日の夜をひそかに待っていたのでした。
MUKTUK初日、夕食を終えてみんなでCabinまで歩いた時に坂道を登りながら見た、明るい満月。月で影が出来ること、初めて知った。昨日は、マンションからオリオン座が見えた。キャンプ場で、犬達を背に南の空を見ると、トレイルのすぐ上に見えたオリオン座と星空を思いだしました。
満月にしても、オリオン座にしても、世界のどこにいても見られるもの。世界が繋がっている感じがします。この先、満月とオリオン座を見る度に、ユーコンの景色や旅を思い出すのでしょう」
私が提供する極北の旅は、時間にすればたった1週間、1年のなかの52分の1の時間でしかない。その中で、自分が感じている全てを共有できるわけじゃない。それは分かっているが、もどかしいことも多く、やり方が違うのかと時々疑問に思うこともある。
でもこうやって、誰かの心に種が蒔かれたと知ったとき、この信じる道は、このまま歩き続けていいのかもしれないな、と、少し楽になるのだ。ブルームーンよ、ありがとう。
「ああ楽しかったね」とその場限りでは終わらない旅を提供したい。
自然の中で過ごした時間が、旅の後もじんわりとした余韻を残してくれるような旅を。
都会の中で地球の声を聞いた瞬間に感じる、何とも表現しがたい、ふんわりと豊かな気持ちを運んでくれるような旅を、と祈りながら。
1 comment:
今までブルームーンなんて概念もなかったけど、今年は特別な思いで眺めさせてもらいました。
場所は大阪とはいえ、晴れてきれいな月が見られました。
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