2010-04-04

月の物語第二章:3月二度目の満月、山桜の下の秘密基地


▲Nishiizu, Shizuoka

3月二度目の満月の夜は、外で月の光を浴びながら眠ろうと決めていた。数年に一回しかなこんな特別な日に、コンクリートジャングルの箱の中にいちゃだめなのだ。

というわけで、やってきたのは、静岡の秘境、西伊豆。
伊豆は東京から近そうに見えて、実は遠い。特に、今回訪れた西伊豆は鉄道が通っていないため、北からも東からも、山道をえんやこらと峠越えせねばならず、この日私は家から5時間!もかけて、目的地にたどり着く。5時間ってば、外国なみの遠さじゃないだろうか、と思わせるほどの遥々感だ。

このあたりの海岸線は、険しく複雑に入り組んだ崖となっており、その崖の下にひっそりと存在するこの日の寝床は、距離以上の秘境っぷりを醸し出していた。なるべく文明社会よサヨウナラな場所を望む私にはぴったりだと、一人ほくそ笑む。

目指す寝床(キャンプ場)は、崖の真下にあり、車は入れない。通常は近くの港から船で上陸するらしいのだが、船酔いクイーンの私は最初から海アプローチを排除し、山桜&アロエが鬱蒼と(極北の植生に慣れた自分からみれば)勢いよく生い茂るジャングル崖を直滑降で下るという陸路を選ぶ。

自由気ままに生える原生林をかき分けかき分け進み、脛に引っ掻き傷を作りながら到着したそこには・・・楽園が広がっていた。

招待してくれたキャンプ場のオーナーHassyKenchanは、
「ここは何もないけれど、何でもある大人の秘密基地なのだよ」
とイタズラ小僧のような表情で得意げに説明してくれ、まさにそこは、原生林と太平洋独り占めの、まさかの原野スポットなのだった。

私が密かに心の中に掲げているモットーに「バージョンアップしたコドモ」的オトナでありたい、という一文があるが、この秘密基地は、このコドモココロのツボを多いに刺激してくれる。多分、ここを訪れた誰をも童心に戻らせるんじゃないだろうか。至れり尽くせりの観光的押し付けがましい提案など何もないので、目の前に広がる自然を相手に遊べるかどうかは、こちらのやわらかな心が試される。
場の力、そしてこの地に目を付けコツコツと開拓してきたオーナーたちの醸し出す雰囲気。これらは、ウエブサイトからは伝わらない、この場に立って初めて分かる感覚だ。

荒れ地から半年かけ、さらに現在も日々開拓整備を進めているHassyは、
「ここで時間を過ごしていると、日の出日の入りの時間、月齢、潮の満ち引き、海風と陸風に敏感になる。地球のリズムを体で感じられるようになった」
と呟いて、まあ、かっこよく聞こえるけど、その実情は、日々生えてくるたくましい雑草と突然現れるイノシシとの戦いなんだけどね、とこんがりと日焼けした顔で屈託なく笑う。

早速時計を外し、太陽と体内時計に従う。日頃被っている大人のクールな仮面を脱ぎ捨てて、童心にかえって天真爛漫に遊び笑い食べ(呑み)月光浴をし、ぐっすりと眠る。一緒にいた友人を、「bettyのそんな姿は初めてみたよ」と言わしめるほどに無邪気に遊んだ、日頃の凝り固まった頭を解きほぐすような爽快な時間だった。

ブルームーンよ、素敵な出会いをどうもありがとう。

and Special thanks to
大人の冒険プライベートキャンプ場 KenVillage


▲眺めよし。テーブルセッティングよし。男の人につくってもらった朝ご飯、最高によし。

▲秘境な割にはちゃんと電波が3本入るので、波の音を聞きながらのアウトドアオフィス。ここは理想郷?

▲太平洋に沈む夕陽にたそがれるふりして気になっている視線の先はビールなのだった。

▲登る・・・?登る!

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