2009-04-10

直球で心をぎゅうと



今回、「犬橇で春のユーコンをキャンプ旅」ツアーを企画した最初の狙いは、秋のカヌーに代わる、この土地に根ざした移動手段で原野を旅したい、そういう旅のなかで出逢えるオーロラは、きっと、普通にロッジからみるよりも、印象深い出逢いだろう、というあたりだった。

蓋を開けてみれば、この旅は

「犬」

だった。(なお、私は生まれてこのかた、犬を飼ったことはなく、犬は、まあ猫よりは好きだが、それほどに思い入れがあるわけではない。そして、この「犬馬鹿」っぷりを発揮したのは、私だけでなく、今回の旅に参加してくれた6人全員に共通する症状。)

旅が終わり、街に戻る直前、犬小屋をまわり、「うちの子」(橇をひいて一緒に旅してくれた5匹の犬)たちに、さようなら、ありがとう、の挨拶をする。

驚いたことに、みんな皆、誰もが、別れをちゃんと理解してくれていた。お腹を見せていつまでも甘えてきたり、去ろうとすると手をさしのべてきたり、日頃は恥ずかしがり屋で犬小屋から顔ださない子も、このときは素直に出てきて優しくキスをしてくれる。

あまり時間はないのに、どの子とも離れがたく、私は揺さぶり続けられる自分の感情に戸惑いながら、その場所にたたずむ。

遠く母屋から夕食の美味しそうな匂いがあたりを満たし、犬たちのおこぼれに与って、妙にころんころんと太ったワタリガラスがカラカラと楽しそうに歌う。極北独特の緩く柔らかな夕陽が差し込み、一面オレンジ色に染まったケネルで、犬の少し熱い体温を感じながら過ごした最後の日のあの1時間は、今思い出しても涙でてきそう・・・。

大好きな恋人と過ごしているような、ふわふわと幸福感に包まれたあの時間は、いったい何だったのだろう。

普段、人間同士のつきあいは、言葉や照れやプライドや服や、いろんなもので感情をオブラートに包んで相手に差し出している。でも、犬たちには、そんな面倒くさいオブラートは存在しないから、自分を何重にもくるんでいる殻をすべて通り抜けて、心のど真ん中をいきなり鷲掴みされてしまい、だから、準備できていなかった私は、動揺してしまったのだ。

私が犬たちと過ごしたのは、たった1週間だったけれど、一冬をこの犬小屋で過ごしたyusuke君は、いったい犬とどうお別れしてきたのだろう?

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