月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向つてそれは抛(ほう)れず
浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁(し)み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
中原中也
「月夜の浜辺」
山口のおまけ。
今回、ベースとなった山口湯田温泉には、中原中也記念館があり、偶然にも、こどもの日でタダだったので、帰る前にふらりと入ってみたこの記念館で、 出逢えた、素敵な詩。
山口、緑あり歴史あり温泉あり地酒あり人は温かく記念館はタダで
いい場所だー。
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