2011-02-15

道東デイズ #5 始まりは間違い電話

a handmade mountain cabin, lovely place. Tsurui, Hokkaido, Japan



タンチョウ観察も鹿肉も乗馬も湿原へのクロスカントリースキーも大満足だったが、今回の旅のいちばんの目的は、友人が1年かけて作り上げた新築キャビンにお邪魔することだった。

自然写真家tomoさんと、カナダ人の奥様Tammy

北の野生動物の写真をライフワークとして撮り続ける彼は、時々、東京で写真展をやっている。だが毎回タイミング悪く、私が東京を離れていたりして会えずじまいと、日本では随分と長い間すれ違いがつづいていた。彼らがカナダに戻ってしまう前に、ゆっくり会いたかった。

ただ、ありがちな世の常で、会いましょう、会いたい、会いに行くからね、と言いつつも、日常はそれなりに雑事で忙しく、よいしょと腰を上げるに至らないまま、時間は無情に過ぎていく。その腰を上げさせたのは、年末の、1本の間違い電話。

偶然は必然か。

私の名字が「あ」で始まることもあり、時折、携帯の操作ミスで(アドレス帳の一番上にあるであろう)私には、間違い電話がかかってくることがある。このときも、tomoさんの携帯をよく分からぬままいじっていたTammyが、間違って私に発信した。

その間違い電話で気持ちが点火した。私は航空会社に電話をし、釧路行きのチケットを予約する。こうして、念願の再会は叶うこととなったのだった。



道路から小高い丘をてくてく登る事15分、丘の上に、素敵なキャビンは建っていた。丘をぐるりと回り込むため、人家の明かりは全く届かない暗いトレイルだが、Tammyは、そこを、ヘッドライトに頼る事なく、暗がりの中をてくてく歩く。
「なんか、この暗闇を歩く時間が好きなのよ」と。
月明かりがなくても、雪道は、目が慣れてみれば、歩くのには必要充分な明るさだと気付かされる。



Tammyは私の少しだけお姉さんで、
自然の美しい景色が大好きで、
キャビンの前に飛んでくる鳥たちをみつけると大興奮して、
嬉しいことも悲しいことも感情がストレートで、
本当にキュートでかわいい女性。
彼女のブログに私のこともチラリ、と。嬉しい評価だなー。



キャビンの片隅、手作り本棚に、星座早見版と星の本が立て掛けられている。

「ユーコンにいるときは、オーロラしか見てなかった。でも、ここにきて、オーロラが見えなくなると、星に興味を持つようになったんだ。不思議でしょ。ほら、あれが、タウルス、牡牛座だよ」

ああそうか。何かが「ない」ってことは、決して悲しいことでなく、他の何かに気付くってことなんだね。



日中に割った薪で(滞在費は薪割り。森の生活は絶え間ない労働の積み重ねで成り立つものね)暖炉に火を入れる。パチパチと薪の爆ぜる音。天井に吊り下げたガスランタンの、力強いシューシューという音と明かり。

秋に木を揺らして実を落とし集めたというサルナシ酒で酔っぱらいながら、北への想いと、情熱と、夢と、希望と、不安と、憧れと、数年のブランクを埋めるべく、毎晩毎晩、飽きることなく、夜が更けるまで話しこむ。

この小さくcozyで暖かな空間がそうさせるのか。
自然への畏敬とか憧れとか、同じ波長を持っている人と話しているからそうなのか。

心からリラックスできる、本当に本当に、貴重でかけがえのない時間が、ゆっくりと過ぎて行った。

「自然を知る人は、逆らえないってことを身をもって知っている人は、生き方に嘘がなく、誰に対しても謙虚だよね」って、tomo、Tammy 、私と全員でふかーく頷く。






2月3日は、大家さんでもある鹿ハンター平田夫妻も加わって節分パーティ。北海道では、豆まきの豆は、大豆じゃなくて、殻つきピーナツ。ヒジョーに合理的な選択!





この家は、彼らの暮らしと価値観は、この絵本を思い出させる。
アウトドア学校時代、アラスカの氷河の上で、インストラクターが読んでくれた、あの本を。

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