2008-02-16

北の大地便り#2 肉片に囲まれて




昨日、暖かい、とコメントしたのを早速訂正します。今日はマイナス20度、鼻に入る息の冷たさは半端なく、やっぱりここは、アラスカ内陸部なのでした。

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さて、今日は1日、狩人たちの仕留めたムース解体作業にお邪魔してきた。普段、肉といえば、スーパーで300g500円の小さなトレイを購入する私に、そんな生々しい作業が耐えられるのか、とチラリと思うが、何事も体験なのだ、せっかくのチャンスだし、と、気合いをいれて参加。ああ、今回のアラスカは、いつもの"美しく静謐な大自然"とはひと味違う。プチ ウルルン滞在記、か。

このリポート読んでも、だれも 、ああ、私もアラスカ行ってみたい!とは思わないだろうなー。[緑のオーロラが 空一面に舞う]とか、[厳しい寒さのなか、キラキラ結晶で舞い降りる雪が美しい]とか書くべきじゃないのか。このブログは、旅を勧めるページなんだから。いいのかー、私。どこに向かっているんだ、自分。


といいつにつ、忘れないうちに書き留めておきます。詳細に書いても、あんまり気持ちのものではないので、さらっとながして説明すると、

1。1週間前に仕留めたという獲物は、4つに分けられ、足を上にしてぶらさがっている。(頭と内臓はすでに除かれ、血もあらかた抜かれ、凍らせてある)

2。ナイフをググっと入れ、毛皮をはぎ、付着している毛を丁寧に取り除く。

3。骨から肉を外し、腱の部分をよけながら、私の知っている肉のサイズまで小さく刻んでいく。部位により、シチュー用、ミンチ用、犬のエサ用、に分けていく。

と、ここにたどり着くまで、男3人がかりで、丸一日かかる作業だ。できる肉は、2パウンド(1キロ)入りのジップロックが100個弱、といったところか。



最初は、恐る恐る遠まきに見守りながら写真を撮っていたものの、[ジップロックに日付書いておいて][この毛毟ってくれる?]と、次次に作業を頼まれ、気付けば、エプロンを掛け鋭いナイフを手に取り、がしがしと解体に参加させられているのだった。



アラスカのすごいところは、手付かずの大自然、とか、豊富な野生動物とか、そういうものの他に、東京での[当然]が、全然[当然]じゃない、ってことに気付かされることだ。その自給自足に近い世界に、文明に虚勢されきってしまった自分が入り込めるかどうかは別として(私は。。。無理)、目の当たりにするだけで、常識が覆される面白さを味わう。

家を自分で建てる、とか、食糧は自分で取ってくる、とか、ものすごくワイルドな生活を、現代でも普通に日常としてやっている人たちがいる事実を見せられると、東京で[こうじゃなくちゃいけない]という考え方は、いや、そうじゃなくてもアリなんだよな、と、考え方が、随分と柔軟になっていくのだ。



"これこそ真のオーガニックフードだ、はっはっは。今日はステーキだぞ"と嬉しそうに笑う彼らの横で、大量の肉片の山と骨と血溜りに、軽く眩暈する私は、おずおずと、ベジタリアンミールを申し出た。オーガニックはいいけれど、せいぜい、ホールフーズ(アメリカのオーガニック専門スーパー)でいいや、と思ってしまう私は、アラスカンにはとてもなれそうにない、ひ弱な都会っこである自分を思い知らされたのだった。

2 comments:

Anonymous said...

眩暈…?ひ弱…??

湯口 公 said...

なんと奇遇、今日俺も狩猟に同行して
射殺後のエゾシカを解体してきました。
なんだか、遠い昔、自分がやって来たことのようで
不思議とイヤじゃなかった。
ちょっと、ハンターこそが真のナチュラリストであるって
言葉、思い出したよ。