八百屋の軒先で出会った、熟れすぎて、4パックひと箱200円で投げ売りされていた苺たち。おお、ラッキー、と、お持ち帰りし、熟れすぎ→腐りすぎ と手遅れになる前に、深夜、砂糖とレモンをいれて煮詰める。
ぐつぐつ
ぐつぐつ
部屋いっぱいに、甘い春の香りを充満させてできあがった、赤い飴色のごろごろ贅沢苺果肉ジャムを、煮沸した瓶に詰める。使う瓶が、「イクラ漬け」のお古だっていうのは、まあご愛敬だ。
冷蔵庫の奥、冬の林檎ジャム軍団の隣に、できあがったばかりの春の苺ジャムをそっと並べる。
*
自分がジャムを煮ることになるなんて、数年前は考えたこともなかった。そんな「可愛らしい」ことは、自分の世界から、一番遠いところにあると思っていた。ジャムは、スーパーで「アヲハタ低糖」を買うもんだ、って。
そんな私を変えたのは、アラスカにユーコンにいくようになって、誰も彼も、日常のなかで、普通にブルーベリーやクランベリーを摘み、凍らせ、また、ジャムをつくっているのを目の当たりにするようになったのが、きっかけなのだ。
あの大地は、旅の後、私の日常と生き方を、少しずつ軌道修正させる。
お土産に持って帰ってよ、とひと瓶もらったこと、
冷凍ブルーベリーを鍋で煮てアイスクリームと食べたデザートの、熱さ冷たさが一緒になった舌触り、
氷点下30度の外で犬と遊び、鼻の頭凍らせて部屋に戻ってきたときに出してもらったブルーベリーケーキとホットチョコレートの温かな味わい
ジャムを煮ながら思い出す、脳裏をよぎる北の国の思い出を懐かしく思いだしながら更ける夜。
No comments:
Post a Comment