2009-08-31

Arctic Circle

On the way from Noatak to Kivalina,



スプルースの木々の
この完璧なまでの円錐形

この大地を創造した神様は芸術家




北緯67度の世界は

私が知っている地球の景色じゃなかった

持ち主のいない影

影が
自分から離れていると
お尻がムズムズしてきて落ちつかない、とは
新しい発見


人間は
空じゃなく
地上の生き物

2009-08-30

Speed Limit 40


@Noorvik, Alaska

Kobuk河の河口にある北極圏の小さな集落

はるばるやってきたはずなのに、
飛行機降りて、最初に目に入ったのが
馴染みある制限速度の標識

ああ、ここもアメリカ

Kiss the sky



キーウエストのサンセットクルーズも

モルディブのシュノーケリング船も

ものの3分で酔うから苦手

三半規管が人一倍弱い自分が

まさか

重力かかりまくりのジェットコースター(または吹けば飛ぶような小型セスナ機)に1日5時間カケルコトノ一週間

なんて拷問を喜んで受け入れたのは

すべて

この景色に出会うため



右手にお守り代わりの酔い止めをぎゅうと握りしめ

額に汗かきながら

それでも

どうしても、この景色たちをこの目に焼き付けておきたかった



瞬きするのも

息するのも忘れて

見入った極北の原野



ときに眼下に通り過ぎる

見事なVの字型の

渡り鳥の群れ

私も今

この群れの一員となり

一緒に飛んでいるかのような

錯覚に陥った



極北 空の旅

2009-08-29

アラスカの女神様!



アラスカは日本の4倍の広さがある

といったって、

私が自分の意思で行けるのは、道路沿い(と、そこから歩いたって、せいぜい道から数十キロの半径)のみだから、

私の頭の中の「アラスカ地図」は相当に偏った作りになっている。つまり、南はキナイ半島から、北に向かって、アンカレジ、デナリ、フェアバンクス、そしてプルドーベイ。

「アラスカ大好き」なんて言っておきながら、笑っちゃう恥ずかしい事実だけれど、そんなものだった。

たとえば、海に呑み込まれそうだという、ベーリング海沿いの「シシュマレフ」という先住民村の、その名前は知っていようと、それはあくまでも星野道夫の本のなかにでてくる、おとぎ話・・・、遠い遠い世界の、あんまり現実感のない話で、

定期便が飛んでいない、チャーターセスナ機でしか辿り着けないような陸の孤島は、本か写真集で出会うべき場所で、まさか自分が降り立つ場所だとは、これっぽっちも思ってやしなかった。

2週間前までは。





2年前、金銭的不自由と引き替えに、時間的自由を手に入れた私は、今回のシーカヤックツアー添乗後、時間をつくって、一人、ゆっくりとバックパッキングを楽しもうと画策していた。誰かに連れて行ってもらう旅は終わりにして、自分の意思で、この大地を味わおうと思っていた・・・のだが、それは叶わなず。その代わりに。


アラスカの女神様が、私の、この大地への揺るぎない愛情を汲み取って、ふっ、と、微笑んでくれたのだ。本当に、人生は、何がどこでどう転がるのか分からない。


どうして私がそこに関われるのか、今でもさっぱり不明だが、大学の「永久凍土研究プロジェクト」のアシスタントのアシスタント(・・・結果的には、邪魔しただけで何の役にもたっていない・・・)として、「飛行機で先住民の村を回り、地中温度のデータを採取せよ」というミッションが、手のひらに舞い降りてきた。

クジ運の弱さは折り紙付きな私が、ここに来て、まさかの大逆転だ。この一度で、一生涯の運を使い果たしてしまったかのような、興奮する話じゃないか。


もう、
年末ジャンボ宝くじが一生当たらなくても
中野商店街アーケードの歳末福引きで残念賞のアメしかもらえなくても
ガリガリ君のあたり棒が出なくても

何の文句も言いますまい。




今から始まるのは、1週間かけて

名前も聞いたことがないような小さな村への訪問 12箇所
無事着陸しますようにと祈った(フライト)数 17回
上空からアラスカの原野を味わった(フライト)時間 22時間
有視界飛行なのにこんな雲の中飛んでいいの、死ぬかと思った回数 4回
こんな乱気流のなか飛ぶの、涙目でエチケット袋ありがとうな回数 2回
この地球ってどんな奇跡なんだろうと感無量だった回数 数知れず


の、(けっこう体をはった)不思議な空の旅の物語。

2009-08-28

アラスカでシーカヤック旅へのお誘い(まとめ)


Holgate Glacier @Kenai Fjords NP, Alaska



ああああああ。

キャンプ道具の片付けとメンテナンス。来週末からのユーコンの準備。その他8月分にたまりに貯まった日常的雑用たくさん。衆議院選挙(不在者投票)。こまごました仕事がいくつか。来月に控えた100キロトレイルレース。見ておきたい写真展。

「忙しい」は一番嫌いな言葉ですが、この日本一時帰国の10日間は、心なくしそうなほどに、バタバタした毎日です。

そして、さらに、今回のアラスカの旅は、プライベート旅行として後半戦の、ネイティブ・ビレッジ・ホッピング & 世界一の秘湯 & ツンドラでカリブー編 へとまだまだ続いていくため、(記憶の新しいうちにアウトプットしていかないと間に合わない!)

こんなに慌ててシーカヤックの報告をしているのです。



最後に、今回の旅のまとめを。

気になる方は、また、改めて「旅の報告会」をやりたいと思いますので、ご参加ください。今回は、シーカヤックと氷河の話しか書いていませんが、それだけではないアラスカ満喫の、コンパクトながら、ぎゅう、と詰まった旅程です。広大なアラスカを、あちこち欲張らず、一点集中型で楽しむのは、「アリ」だと、今回確信しました。

そして、来夏、ぜひ体験してみてください。今回の旅の、一番のエッセンスは、きっとここには書いていない部分にこそあるし、何より、百聞は一見にしかず、なので。



地球探検隊 大人の修学旅行シリーズ
「氷河を海から眺めたい! 夏のアラスカ シーカヤックキャンプ」
~ シーカヤック、原野キャンプ、氷河、海の野生動物 ~


<出会った野生動物>
・ムース
・ドールシープ
・白頭鷲
・リンクス
・グリズリーのベリー沢山の新鮮な糞
・ザトウクジラ
・シャチ
・Porpoise(いるかの種類)の大群
・アザラシ
・アシカ(トド?)
・ラッコ
・パフィン(ツノメドリ)
・ルーン
・ムール貝
・くらげ
・ハリバット(釣り上げられたやつ)
・タラ(釣り上げられたやつ)


<移動手段>
・バン
・10人乗りモーターボート
・2人乗りシーカヤック
・足(トレッキング)
・アラスカ鉄道
・タクシー


<宿泊場所>
・味のある民宿(B&B)
・便利な立地のモーテル
・トイレはちゃんとあった、氷河フロント・ビューのテント(暖かい寝袋&マット&枕つき)、BGMはALASKAN THUNDERで


<お食事>
・アラスカ産サーモングリル
・キャンプ場で取れたばかりのブルーベリーがけヨーグルト
・トナカイソーセージのシチュー
・カリブーバーガー(美味)
・ハリバットのフィッシュ&チップス
・ウイスキー、25000年の氷河オンザロックで
・Alaskan Amber(地ビール) 5ケース
・氷河を眺めながらの朝の熱いコーヒー

氷河への扉(アラスカでシーカヤック#5)


Pederson Glacier @Kenai Fjords NP, Alaska

'Pederson lagoon should be entered and exited at or near high tide only'

Pederson Glacier。

Ailiak Bayの奥の奥、入り組んだラグーンにひっそりとたたずむこの氷河。海に直接面していないため、崩れ落ちた氷はすぐには大海に流れ出ず、湖面に、その大きな塊のまま漂っている、という。

「この氷河は絶対に見た方がいい」、と、BlettとGunnarが口を揃えて言うが、この氷河への扉が開くのは、1日2回。入り口が細く浅すぎて、干潮時は、水路が途絶えてしまう。釣り屋でもらえるTide Tableを眺めながら、満潮時にそこにいられるよう、1日の計画を練る。

この日の満潮は午後5時50分だった。

キャンプ場まで、片道13キロの道のりを考えると、夜10時まで空が明るいからこそ行ける、ギリギリの時間帯。それでも念のために、ヘッドライトを持って行く。昼すぎにキャンプ場を出発、ラグーン近くの岸に上陸。ランチをとりながら、2時間ほど、潮が満ちるその時を、ゆっくりと待つ。遠く海面には、モグラ叩きのように、ときおり、アザラシたちがそのツルリとした頭を出しては、私を不思議そうに見つめる。

午後5時。

川のような細い入り江を、潮の流れに乗るように漕ぐこと30分。ようやく辿り着いたこの場所は、曇って白い世界だっただからだろうか、あまりにも音がない無機質な世界だったからだろうか。景色にのみこまれそうな恐怖感を感じながら、誰も声をださず、ゆっくりと、カヤックを進めていく。

「来ちゃいけない場所に来てしまったみたい・・・」
と、誰かが小さくつぶやいた、そんな、不思議な場所だった。

満潮と干潮の間(アラスカでシーカヤック#4)

Holgate Arm Camp Ground @Kenai Fjords NP, Alaska

Leave No Trace
#5 Minimize Campfire Impacts

「原野でキャンプするときは、お湯はストーブで沸かし、暖は服でとりましょう。不要な焚き火は極力控えるべし。」



アウトドアのイロハを、NOLSという学校で学んだ都会派アウトドア人間の私は、ベースとなる考え方がどうもストイックらしい。時折、なんだよ、小さいこと言うなよ、もっと楽しく遊びにきたんだよオレは!、と一緒にキャンプしている同行者から、かなり煙たがられる。


焚き火もね、
焚き火も、あんまりやりたくないのだ、頭では。手つかずの自然、という姿から離れていってしまうから。


でも、こんな景色のなかに、焚き火のオレンジ色の火がないなんて、「画竜点睛を欠く」というものだ、という事実もわかっている。


ふーむ、どうしましょ、と3秒悩んだのち、一緒にいた、同じNOLS(アウトドア学校)同窓生のGunnarと話しあって、タイドラインの間の砂を掘り、小枝をすこしだけ集めてつくった、小さな小さなキャンプファイア。この場所なら、次に潮が満ちたとき、この焚き火の跡を、全て消し去ってくれるはず。


火の持つ、
やわらかく暖かな光は、
やはり、よいです。

Alaskan Thunder (アラスカでシーカヤック#3)


Holgate Arm Camp Ground @Kenai Fjords NP, Alaska

夜10時半。北の夏には、闇がない。ヘットライトはいらない、ぼんやりとしたやわらかな明かりの下、2本目のビールを空けながら、明日の計画を再確認する。

それにしても、アラスカの有名な地ビール、Alaskan Amber Paleの瓶に描かれたイラストそのまんまの世界じゃないかここは、と、今いる場所を認識するたびに、つい顔がにやけてしまうこのベースキャンプで、


断続的に耳に入ってくるのは、雷の音だった。


Alaskan Thunder。

地元の人は、氷河が崩れ落ちるときの音を、「アラスカの雷」と呼ぶ。


ベースとしたキャンプ場は、フィヨルド最深部に位置していて、(だからこそ、海面は驚くほどの静けさで、まったくの初心者でも漕げるのだが、)出会いたい出会いたいと願っていたクジラは、この奥深いキャンプ場までは、入り込んでこれなかったようだ。「鯨の唄を聞きながら眠る」夢は、今回の旅では叶わなかったが、

かわりに、テントのなかで子守歌にしていたのは、Alaskan Thunder。
少し刺激のある、子守歌。

着替えはテントで(アラスカでシーカヤック番外編)







地球探検隊オフィスにいったら、素敵なプレゼントが届いていました。

同業者なら、この気持ち分かってくれると思いますが、参加してくれたメンバーからの「楽しかった、行ってよかった」の声が、この仕事を続けていくうえでの、一番のご褒美であり、心の支え、です。

2009夏、アラスカでの時間を共有してくれた、チーム「巴投げ5段」の6人の皆様、

こちらこそ、笑顔たえない1週間を、ありがとう。

P.S.

右下の、mihoさんからのメッセージですが、これから、着替えるときは、「あっち向いててー」と喚き、逆に全員の注目を集めたのち、外で大らかに着替える、なんてことはやめ、ちゃんと、テントの中に入って、こっそり着替えることとします。これは、「逞しい」じゃなくて、「オンナとしての大切な線を越している」感じです。

ワイルドだけど品のある、アウトドアガールを目指せ!

参加者のひとりが、ブログでこの旅を綴ってくれています。
違う視点から、この旅を。
 http://blog.goo.ne.jp/zutto_kitto

2009-08-27

氷河捕獲大作戦 (アラスカでシーカヤック#2)



Getting Glacier Ice from Holgate Glacier @Kenai Fjords NP, Alaska



だいたいが、アラスカの風景の美しさというものは、人を柄にもなく謙虚にさせ、何だか崇高な気持ちになってくる。ああ、もしかしたら神様っているのかなあ、これからは、小さなことにくよくよせず、もっと大きな気持ちで、毎日を生きていこう・・・なんて一人瞑想にふけってしまったりする。
が、

即物的な楽しみも、忘れちゃいけない。


25000年前の地球をグラスの中で蘇らせ、最高のウイスキーを最高のシチュエーションでいただく」ために、遙々日本からここまでやってきたのじゃないか、と、最初から、メンバー全員の意見は一致していた。

だからこそ、初日も関わらず、目的が共有されたからこその見事なチームワークが結成され、危険を顧みず(←大げさ)氷河のカケラ捕獲作戦が実行に移されたのだ。

慣れないパドルワークで、氷に近づく。これまた慣れない水面で、ぐらぐら揺れるカヤックを必死で操って、氷河から生み落とされたカケラをパドルの先で捕獲。水面に出ている部分は10%くらいだから、小さくみえても意外と大きなこの氷塊は、なかなかカヤックの上には持ち上がらず、手からするりと逃げていく。

遠くで、ガイドの「ああ、そんな大きなやつは危ないからダメだー。」と声が聞こえるが、そんな注意はいちいち聞いていられない。数十分の悪戦苦闘ののち、どうにかこうにか、小さな氷塊をカヤックのデッキに括り付け、キャンプ場へ戻る。

「アイスピックが持ち物リストに書いてなかった!」と、まさかのクレームをうけつつ、何とかグラスに入るまでに細かく砕いた氷に、スワードの街で仕入れてきた、12年物Macallanを注ぎ込む。

午後8時の(北の地だから)遅い夕陽のやわらかな光線を受け、琥珀色に輝く液体。向こうには、この氷が生み落とされた氷河が背景として存在し、


パチパチ
 ピチピチ


と、氷の気泡がはじける音を聞きながら、

ああ、この一杯って、帝国ホテルのバーだって足下にも及ばないんじゃない?、と、 多分、世界でもこの上なく贅沢なシチュエーションのもと、満足げにウイスキーをいただく私たちなのだった。

2009-08-26

はるばると(アラスカでシーカヤック#1)


Holgate Glacier @Kenai Fjords NP, Alaska


アラスカの遊び場は、楽しい場所ほどアクセス悪い。

行ける場所までは動力を最大限利用して、
でも、最後は、エンジンの動力を借りず、自分の力で。
何とも、贅沢な遊び方を要求してくるよな、と思うのだ。この大地は。



今回のアドベンチャーの舞台は、キナイフィヨルド国立公園。

ジェット機で半日、東京からシアトル経由アンカレジへ。
車で3時間、アンカレジからキナイフィヨルド国立公園の入り口、スワードへ。
ボートでさらに3時間、Aialik Bayの入り江のキャンプ場へ。
私達が乗ってきたボートが荷物を下ろし去っていくと、そこには、静寂な遊び場が待ち受けていた。

遠く遠く、本当に「はるばる」やってきたこの場所で
いよいよシーカヤックに乗り込み、さらに漕ぐこと1時間半、
氷河の先端まであと1キロ、の距離まで近づいく。



海に流れ出した小さな氷塊から、数万年前の気泡が、途絶えることなく、ぱちぱち、ぱちぱち、と、BGMを奏でている。いくら晴れていようと、いくら夏であろうと、氷の塊から吹きつけるのだもの、どうしたってひんやりとする冷気が、まだ慣れないパドリングで火照った頬と手を、みるみると冷やしていく。


すぐ目の前に見えていたはずなのに、岸からこの場所にたどり着くまでにかかった時間と、無駄に力が入ったパドリングがもたらした上半身の疲労感に、この、目の前に広がる氷河の大きさを、脳でなくからだで実感する。漕ぐ手を止め、私たちも、静かに氷塊のひとつと化し、しばしフィヨルドの海面にぷかぷかと浮かんだ。



ここ何ヶ月も夢想してきた景色が、本当に目の前に広がっていた。

2009-08-25

Alaska is like a box of chocolate

"Life is like a box of chocolates. You never know what you're gonna get."


と、帰りの飛行機の機内映画で、ベンチに座ったフォレストガンプがもそもそ呟いていた、が、アラスカはまさにチョコレートボックス。この大地は、何度行っても、訪れる度に、行く前には想像できない「新しい」味を賞味させてくれる。今回も然り。ああ恐るべし、な場所だ。




それにしても、太平洋を8時間でまたいでしまうジェット機の速度というのは、身体だけは運んでくれるが、心までは運んでくれない。

いつのまにか初秋の涼しい風が吹いている東京の自宅に戻り、シャワーを浴びる。冷たいビールが胃に入ると同時に、身体の芯に澱のようにたまっていた、旅の緊張感と疲れが、ゆるゆると解けゆく心地よさにほっとしつつも、

つい数十時間前に目にしていた風景とのギャップに、(まだブルックス山脈をうろうろしている)心は、何故いま私が東京にいるのか理解できず、ザワザワと戸惑ったままだ。




しばらく音信不通となり、ご迷惑おかけしました。
アラスカ2009夏旅より 本日帰国しました。

時差ぼけマックスのため、今日はもう寝ます。報告は、写真は、また明日以降。