2009-03-31

キャンプのもうひとつの醍醐味

今回のスタッフ一同。
左から

Canonのカメラで皆を激写してくれたイギリス人Edward,  
夏はパドリング、冬は犬橇&スキーガイドのカナダ人Graeme, 
極北仕様コートを着ていると、ときにFirst Nationに間違えられる私、と、
ドッグマッシャー見習い中の日本人Yusuke


この北の地でガイドする人たちの独特の人生観、価値観って、好きだ。一緒に仕事していて、楽しくてしかたない。



これは私の持論だが、キャンプツアーの成功の鍵は、チームワーク。今回でいえば、犬と人間。参加者間。スタッフ間。参加者とスタッフ、の。

誰もが主役。参加者が、至れり尽くせりのサービスを受ける「お客さん」の立場に甘んじていると、キャンプの醍醐味は半減してしまう。それぞれの立場でできることをし、それぞれの立場で相手を思いやり、信頼しはじめると、ギュギュゥ、と、ぐんぐん結束が固くなっていく。

今回は総勢10名+38匹の大規模チームだったが、「極寒+犬」、という要素が入るため、普段のキャンプの3倍くらい忙しいこのキャンプも、すべてがスムーズにいったのは、全員(犬も含め)の気持ちがちゃんとまとまった、その賜。


「ポテンシャルの高い人たちと旅を共にし、自分もひっぱられて、でも、自分のできること、できないことを見極め、無理をしないことが、周囲の人たちとの配慮につながり・・・、そのことを学べたのがよかった」

と、ほぼ初キャンプ体験の参加者Hiroさんが感想をくれたけど、このチームビルディング体験は、結構ヤミツキになる感覚なのです。



そして、忘れる前に。
今回一番のご褒美は、Graemeに、「楽しかった。また一緒に仕事したい」と言ってもらえたこと。何よりの賛辞をありがとう。




▲アウトドアで学ぶリーダーシップ

Yukon River & Dogs

@ Livingstone Trail, Yukon, Canada

犬のシルエットとユーコン川って、お似合いだと思った夕方8時。(←3月後半は、もう相当に日が長くなっています)

朝一番


@ Livingstone Trail, Yukon, Canada


犬橇を操り、キャンプに出かける。
夜、犬橇の中にすっぽり入り込んで犬(「うちの子」たち)の傍で眠り(←テントはあるのだけど、どうしても、外で寝たかったので)、

朝、寒気に頬を撫でられ目覚めたとき、最初に目に入る風景。


そう、この景色に出逢えるのだから、

ちょっとばかし寒くて、・・・水筒の水や歯磨き粉や日焼け止めが、コッチーーン!と凍り付くウインター・キャンプも、楽しくてしかたない、のだ。(・・・と、参加したお客さんも思ってくれているはず・・・と信じる!)









▲ウインターキャンプ作法を学ぶなら

見慣れた川壁

@Yukon River, Canada

ああ、この独特の川岸の様子は、ユーコン川じゃないか。
カヌーで見ていたあの景色に、再び、今度は犬橇で!

うちの子が4

@Muktuk Adventures, Yukon

On dutyな間のSakura。きりっとしまった顔に惚れる。




▲イメージトレーニング重ねて来年に臨む

うちの子が3

@Muktuk Adventures, Yukon

うちの子たち、ったら、笑顔も最高。




▲今回、参加者の一人は「チョビがいっぱい~」と呟いてた

うちの子が2

@Muktuk Adventures, Yukon

参加者みんなが、「自分の犬」を与えられ、世話をし、共に旅する。そして徐々に、「うちの子が」「うちの子はね」、と、親バカ自慢大会になっていく 。


・・・うちの子の甘えた表情、かわいいでしょ?




▲思わず大人買い。

うちの子が1

@Muktuk Adventures, Yukon

犬とこんなに意思疎通ができるとは。
犬にこんなに心鷲掴みにされるとは。




▲今回お世話になった犬たちも沢山登場するルポ本。

Dog Sledding



@Yukon River, Canada

2009年春、極北の新しい遊びをみつけた。
犬橇。

東京に戻った今、朝、ジョギング中に犬連れの人とすれ違うと、つい足を止めてしまう。見知らぬオンナに突然、「ああ、かわいいですねぇ。昨日まで犬橇していたんですよー」と声かけられる飼い主たちは、いい迷惑だろう。中野近辺の犬の飼い主様、どうもスミマセン。




▲今回のMuktuk犬橇体験はこの本で気分味わえます

2009-03-19

久々のユーコン行き

ホワイトホース天気予報。カナダ気象庁より。



▲ホワイトホース側の「オーロラ予報

あ、そろそろ桜咲くかも~、と、つい半袖&サンダル取り出しそうになるが、
今、荷造りしている訪問先は、春とはいえ、まだまだ氷点下。
クローゼットから取り出すべきは、Tシャツでなく、ダウンジャケット&ウールの靴下。



キャンプには、暑すぎず、寒すぎず、よい天気予報かな。
初企画「原野で犬橇キャンプ」、行ってきます!


2009-03-17

シャーベットは蜜の味 /荒川マラソン完走記


シャーベット早食い競走」に参加して、ちょっと燃え尽き症候群気味。

この競走は、9時によーいどん!とスタートし、15カ所のポイントで

水、水、スポーツドリンク、ブドウ糖、オレンジ、水、水、スポンジ、レーズン、クリームパン、スポーツドリンク、バナナ、おにぎり、レーズン、水、水、35.7Kでシャーベットカップ丸ごと早食い、バナナ、水、レモン、水

を胃の中におさめ(・・・食べすぎ?)、42.195キロ先のゴールを目指すレース。別名、フルマラソンとも言われる。

今回、ありがたいことに、怪我無く楽しく参加でき、4時間5分後にゴールを踏めた。



思いかえせば、ゴールを踏むまでの長い長い道のりは、数年前から始まっていたのだ。

2005 「走るのだけは・・・」と思っている私に、有無を言わせず、14キロ走らせたOBSのアウトドア・プログラム
2006.第一回東京マラソンに「なんちゃって」とノリで申し込んで、落選し、ほっとする
2007.7 アラスカで一ヶ月の原野サバイバル訓練をやっているときに、「こんなツライならフルマラソンの方が簡単」とつぶやいた同行者のひとことがずっと耳に残る
2008.3 アラスカの帰り道に立ち寄ったサンフランシスコで。参加者がお姫様扱いされる「ティファニー・ナイキ・ウーマン・マラソン」に思いつきで申し込んだら、このクジ運悪い自分が、あろうことか当選してしまう
2008.10 半年後、ほとんど練習せずに走ったら、地獄の5時間7分が待っていて、それなのに、やっと手に入れたティファニーは、(そこに到達するまで努力していないから)それほど嬉しくなかった。
じゃあ、妥協も言い訳もせず、ちゃんとトレーニングして、走ってみたら、自分はどこまでできるの?



と、気持ち新たに、この半年、態度改め尚して、臨んだリベンジ大会。

走った距離:42.195キロ。
走った時間:4時間5分
自己ベスト更新: マイナス1時間2分。


(密かな野望だった)4時間は切れなかったけど、はみ出た5分は、今の実力ではどうしても必要な5分間だったので、残念ではない。そして、今回は胸を張って言える。

「私、マラソン走ったことあるんだよ。」とね。

これから、私に会ったら、「ランナー」と呼んでください。



それにしても、東京マラソンの影に隠れているこの荒川マラソンは、内容も、超地味。

ゴール後には、(サンフランシスコのときのように)タキシード姿の男性も、赤い絨毯も、ティファニーのネックレスも、finisher Tシャツも、ベーグルやブルーベリーやバナナも、フルーツ・スムージーも待っておらず、柄杓でもらえる紙コップの水だけがご褒美の、地味な終わり方だった。

それなのに、青い魅惑の箱、ティファニー完走ペンダントよりも、冷たい水のほうが何故か嬉しかったのは、ちゃんと準備して臨んだ、その数ヶ月間の自分に対して納得がいったからだろうか。

25キロくらいから足も気持ちも疲れて疲れて、フラフラと、35キロで待っているシャーベットだけを胸に気力で走ったあの1時間、そして口にしたシャーベットの冷たさ美味しさといったら、高級アイス・ハーゲンダッツも叶わない!



荒川マラソンいいところ
・家から近い、知った道
・1キロごとにきちんとマーカー
・給食&給水のタイミングと内容が完璧

むー、なところ
・景色がススキと橋と野球場だけ
・ゴール後のご褒美がない

今はもういい、と思っているが、次に参加するならこんな大会
・ご褒美が嬉しい内容
・走っていて景色が楽しい
・もう少し高い目標値設定を自分に
・給水は(紙コップなしで)マイカップ持参な大会



「人生に一度くらい、マラソンいつかは挑戦」と思っている女性の方へ
Nike Women Marathon・・・ Run like a girl! は、初デビューに相応しい、お祭りっぷり、ご褒美っぷりで、景色もすばらしく、給食はギラデリのチョコレートで、超!お勧めです。締切間近 。

申込み(抽選)締切: 3/18(水) PDT時間
開催日:10/18 (日)

申込サイト:

運良く当選してしまったら、飛行機&宿の手配、喜んでお手伝いします。wildernessryoko[at]yahoo.co.jp までご相談ください。(仕事モード)


学生時代の、期末テストが終わったときのような安堵感と虚脱感を久々に味わいつつ、次は犬に走ってもらいに旅にでなくては。気持ちをユーコンへスイッチ!

2009-03-13

新宿の雑踏にアラスカの風が吹く

朝。
テント越しに感じる暖かな太陽の光。夜明けだ。

眠い目をこすりながら、おぉ寒い寒いと寝袋にくるまったまま、入り口のジッパーを(ジッパーが布を噛まないように気をつけてそろそろと)開けてみると、

広がる世界は全てピンク色に染まっていて、

ひょろ長いスプルース生えるツンドラの
だだっ広い大地の広がりの中にぽっつりと

ムースのシルエットが浮かび上がっていた。

ああ、この景色に出逢えて、よかったな・・・
寒い思いして
重たい荷物担いで

こんな場所までやってきた甲斐があったな・・・



という夢想をしばし繰り広げた、
コニカミノルタプラザの展覧会の片隅。


写真はもちろんだけど、私はソノハラさんのやわらかな声が好き。アラスカの音がする。



園原徹写真展
ALASKA PEACE ON THE LAND
@新宿 
3/23(月)まで

夜、いつもとは何かが違う自分の影の様子。

大都会のネオンの明るさに負けていない、満月の光の強さに驚く。

2009-03-11

完走、完踏

雨が続いた後の太陽が嬉しい週末、つい、調子づいてbeautiful Sunday~ と(土曜日だけど)口ずさみたくなる心地よい週末、「体温で発酵」友達と一緒に、朝も早くから奥多摩へ。

春のあたたかな日差しを浴びながらの、トレイルラン。

(久々の友人との情報交換は、飲み屋より森の中で、が、最近の傾向。夜、紫煙燻る飲み屋で、ではなく、昼、汗をかいた後太陽の下で、という条件のほうが、ビールも喉ごしを100倍よくさせてくれるし。健康的ー!)

彼は、私のまだ知らぬ世界=ウルトラマラソン、を何度か経験しているので、走りながら、私はずっと質問攻め。その答えから透けてみえた、この人の走る「意味」は、ちょっと新鮮で、最近、偏っていた目線を、ニュートラルに戻してくれた。

「心拍数なんて、測ったことないよ、自分の体が気持ちよければ走るし、苦しければ歩くだけ。」

「時間じゃないんだよ、景色を楽しんで、地元の人との触れ合いを楽しんで。ウルトラの大会では、「完走」とは呼ばず「完踏」する、っていうんだ。」



走る人たちと話していると、(または、雑誌を読んでいると、)「サブスリー・サブフォー」だ「キロ何分」だ「そのためにはこのシューズ」「心拍数は210マイナス年齢の・・・」というあたりに話が集中しがちで、いかに自己タイムを縮めていくか、速く走るのか、という会話が多く、いつのまにか、私もその罠に嵌りかけていた。速く走れることこそエライ!というような。

私が、「今まで出た中で、どの大会がお勧めですか?」と聞けば、「xxxは、風もないしフラットだから走りやすいよね」と言われ、ふうん、と思いながらも微妙なひっかかりを感じた、その、小さな違和感の正体が、ちょっと見えたぞ。


ゼーゼーハーハーでは、どうにも醜いので、きっちり格好良く走る基礎体力は保ちつつ、目的を間違えず、景色を楽しむ目線で、走っていこう。歩いていこう。




あ、この本も、同じ視点だ。





もうひとつメモ。

これ、景色やばそう。暑そう。2月か。
DEATH VALLEY TRAIL MARATHON

苺ジャムはアラスカ土産

八百屋の軒先で出会った、熟れすぎて、4パックひと箱200円で投げ売りされていた苺たち。おお、ラッキー、と、お持ち帰りし、熟れすぎ→腐りすぎ と手遅れになる前に、深夜、砂糖とレモンをいれて煮詰める。

ぐつぐつ
 ぐつぐつ

部屋いっぱいに、甘い春の香りを充満させてできあがった、赤い飴色のごろごろ贅沢苺果肉ジャムを、煮沸した瓶に詰める。使う瓶が、「イクラ漬け」のお古だっていうのは、まあご愛敬だ。

冷蔵庫の奥、冬の林檎ジャム軍団の隣に、できあがったばかりの春の苺ジャムをそっと並べる。



自分がジャムを煮ることになるなんて、数年前は考えたこともなかった。そんな「可愛らしい」ことは、自分の世界から、一番遠いところにあると思っていた。ジャムは、スーパーで「アヲハタ低糖」を買うもんだ、って。


そんな私を変えたのは、アラスカにユーコンにいくようになって、誰も彼も、日常のなかで、普通にブルーベリーやクランベリーを摘み、凍らせ、また、ジャムをつくっているのを目の当たりにするようになったのが、きっかけなのだ。
あの大地は、旅の後、私の日常と生き方を、少しずつ軌道修正させる。

お土産に持って帰ってよ、とひと瓶もらったこと、
冷凍ブルーベリーを鍋で煮てアイスクリームと食べたデザートの、熱さ冷たさが一緒になった舌触り、
氷点下30度の外で犬と遊び、鼻の頭凍らせて部屋に戻ってきたときに出してもらったブルーベリーケーキとホットチョコレートの温かな味わい

ジャムを煮ながら思い出す、脳裏をよぎる北の国の思い出を懐かしく思いだしながら更ける夜。

2009-03-10

リベンジ・フルマラソンまであと1週間。

家の近所を走るときのルート選択のひとつは、「川沿い」、だ。カンダ川、ゼンプクジ川、ミョウショウジ川。多少なりとも緑がある。鳥がいる。信号がない。水の音が落ち着く。理由はいろいろ。

それから、「緑道」。地図とにらめっこしていると、意外とみつかる。以前、川だったけれど埋め立ててしまった道。人が線を引いたのではない、地図の中で不自然なカーブを描いたその細い道は、昔の川の通り道。

いずれにせよ、コンクリートで頑丈に護岸され、絶対に流れを変えることのない、東京の小さな川たち。


一方で、
夏の企画を考えていて、アラスカの地図を・・・うねうね、にょろにょろ、自由に蛇行しまくる川を眺める。写真や飛行機から眺めている分には、その自由奔放っぷりが楽しく、それなのに、実際に歩こう(渡ろう)とすると、気が遠くなるほどに、途方もなくやっかいな、あの川たちが懐かしい。

2009-03-04

この旅は終わりでなく次への始まり

「・・・昨日アラスカから無事に帰ってきました。すっかり私はアラスカが気に入りました。本当に良かったです。これから本気で英語を勉強して、また絶対に!行きたい場所です。

(犬橇マッシャー入門は)とても貴重な経験ができ、私の宝物になりました。この旅は終わりではなく、これからまた先への始まりにします。

必ず、アラスカへ戻ります。ありがとうございました・・・」
(2009.2 アラスカ犬橇マッシャー入門参加者より)


この冬は、幸運にも、「犬橇をしに北の大地へ行きたい」という方の個人旅行手配の手伝いをする機会に恵まれた。

自分があの大地へ行けずとも、こうやって、アラスカの大地とそこに呼ばれている人をつなぐ仕事をさせてもらえるのは、仕事冥利につきる、というものだ。その一人が、犬橇マッシャー体験を終え、戻ってきてすぐにメールをくださった。(この種の連絡は、この仕事の一番嬉しい副産物のひとつ。)

ひとつの旅が、ああ楽しかった、(・・・というだけでも、日頃のストレス解消、リフレッシュとして十分旅の醍醐味としてアリだと思うが・・・)で終わりにならず、次につながるステップとして存在できるなんて、

たった1週間かそこらの時間が、人生の視点を変えるきっかけに成り得るなんて、なんて素晴らしいことなんだろう。

いい旅は、いい書籍と、いい人生の先輩と、偶然出会うようなものじゃないかな。 あ、でも、その人の「意識」や日頃の心がけもあるだろうから、偶然とも言い切れないけど。必然?いずれにせよ、下手したら、人生観変えてしまうような、その人にとってのの人生の大きな杭、のようなもの。。



「この旅は、終わりでなく、次への始まり」

そういえるような「旅」「時間」と、たくさん関わっていけるよう、きっちり舵をとっていこう。

彼らは生まれつき、走るのが大好きなのだ

「体重60kgの人が1kg落とすには、117km(=7000kcal)走る必要があります」

最近読んだランナー向けの情報。なるほどね。意外に体重って落ちないものだ。

そして今月のナショナルジオクラフィックには、犬ぞりの話がチラリと。

体重1kgあたり、1日の消費カロリー
大会に出場中の競走馬・・・99
ツールドフランスの自転車選手・・・308
アイディタロッド・レース(*)の橇犬・・・1078
(*)アラスカで毎年3月に開催される、1850kmのコースを走る犬ぞりレース。

シベリアン・ハスキーやアラスカン・マラミュートといった橇犬は、走り始めて数時間後に新陳代謝が急激に高まり、14時間休まずに走り続けられる。カロリーは沢山消費するけれど、激しく運動しても、疲れないんだそうだ。つまり、「彼らは生まれつき、走るのが大好きなのです」。

やっぱりねー。

(が、私は犬でも馬でもアスリートでもない、一般の人間だから、2時間も走ると疲れてしまい、11日後の42kmを考えると、今日の天気くらい気分は憂鬱。)




▲今月は興味深い記事多し。「カナダのオイルサンド」/「省エネ生活で何が変わる?」

晴れの日も雨具を忘れずに

雨。雨。雨。雨。雪。

天気のすぐれない日が続いた後、ようやく青い空を見せた朝。やっほぅ、と向かう森。今日の天気予報は降水確率0%、気軽な裏山だし、雨具は要らない? と0.1秒悩んだ後、でも、ウインドブレーカー代わりにもなるしね、と、一番軽いレインギアをバッグの底に突っ込む。


久々に入る森は、昨日までの天の涙をスポンジのように全部受け入れ、濡れた落ち葉も手伝って、踏みしめる土は、ふわふわ、ふわふわ。ああああ、アスファルトと違って、足に優しいなあ。嬉しいなあ。

と、久々の森の柔らかさに喜ぶ間もなく、頭上から、ピシッ、ピシッ、と私目がけて誰かが雪玉を投げつけてくる。

む?誰?何者?


そう、それは、昨晩枝葉に積もった雪が、お日様の光で解けだし、木の上にいることが耐えられなくなった証なのであった。

一方的な雪合戦に、勝てるはずもなく、相手陣地にいるかぎり、降参すべもなく、圧倒的に不利な私は、ただレインコートを被って、湿気って重たい雪玉を受けるしかない状況なのに、

冷たさでなく、暖かさと春の息を感じてしまい、にやにやしながら走る、2月の最終日。

@高尾