2008-11-12

くすぐったい主役の日

安曇野編、最後です。



小さい頃、誕生日が・・・、いや、誕生「会」が、大好きだった。大切な友達を呼んで、おかあさんが美味しいご飯とケーキを作ってくれて、日頃は麦茶なのにこの日だけはジュース飲んでもよくて、食卓を囲んだ友達が、かわいらしい包みのプレゼントをくれて。その日ずーーっと、私が主役。たくさんの人が笑顔でおめでとう、と言ってくれる、嬉しく、くすぐったい、うふふふふ、な日。

「誕生日プレゼントをもらうのか誕生日会をするのか、どちらかにしなさい」という親からの二者択一命令のもと、たいがいは、誕生日会を選択していたのは、親の仕事柄、1,2年で転校していたため、「いつかは別れ行く」友達と過ごす時間が愛おしかったのかなあ、と、今となっては思う。

まあ、何にしろ、コドモの頃は、誕生日とクリスマスと正月は、1年のなかでも大興奮な「ハレ」の日だった。(・・・あ、今も?)


そんな嬉しい気分を、久々に思い出させてくれたのが、安曇野の森の幼稚園。私が立ち寄ったその日その時間は、ちょうど、「誕生日会」が開催されるところだったのだ。




この日の舞台は、枯れ葉広がる森の中。みんなが丸く座り、主役の台には、きちんとアイロンで折り目がつけられたテーブルクロスが引かれ、花が飾られている。

奥で隠れていた主役の女の子は、布キレをマント代わりに肩から羽織って、準備万端。金と銀の折り紙でできた冠を被った、月の妖精と星の妖精に手を引かれ、みんなを見渡す主役の席へ着席。

月と星の妖精から、みんなのメッセージが書かれた色紙をプレゼントされた後、

隣にお母さんが座って、この女の子の4年間の歴史を、写真紙芝居ふうに、みんなに説明してくれる。「11月x日、xxxgの大きな赤ちゃんで産まれてきて」「xヶ月で、もうお話するようになったのよ」・・・。自分が育っていくその紙芝居を見ながら、女の子は、くすぐったげな表情で、お母さんを見上げ、みんなを見渡す。

次に出てきたお父さんは、女の子の横で、「1日先生」役。得意の切り紙で、ハロウィンに出てくる、カボチャやコウモリやガイコツを、魔法のように、あっという間に切っていき、みんなをおもてなし。女の子は、自慢のお父さんをみんなにも知ってもらえて嬉しいなあ、と得意げな様子で見守っている。



そう、この誕生日会がすごいのは、ケーキもプレゼントも飾りも、お金かかったものなんて、何ひとつなかった。それなのに、この日主役の4歳の女の子にとっては、きっと、どんなにお金かかった煌びやかな贈り物を差し出しても叶わない、幸せ溢れる日だったろう、ってことだ。


先生、友達、そして両親の愛情がプレゼントとして溢れていた、この幸せな誕生会は、大人になっても忘れずに覚えているんだろうなあ。彼女のキラキラ輝く表情から発せられる幸せな空気を、横からまともに吸い込んでしまった私は、しばらく動けず、一緒になって、うふふと嬉しくなっていたのだった。






そういえば、密かな愛読漫画も、この、ふわふわ幸せな世界観。

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