2008-11-13

まだ半分?もう半分!

コップに半分入った水。
まだ半分派?もう半分派?

じゃあ、ガソリンは?



ガソリンメーターが半分を下回る。私の場合は、「おおっと、もう半分しかない。給油しなくちゃ」と思う「もう」派だ。300キロ進まないと次のガソリンスタンドがないアラスカじゃなくて、1キロごとにガソリンスタンドがある東京でだって、この基本的考え方は変わらない。

ガス欠で立ち往生なんて、とんでもない!!

ときに大胆な行動をすることもあるが、基本的には臆病で慎重な人間なのである。

だが、この間、同乗したドライバー、ミスター・無鉄砲は、私とは、思考回路を異にしていた。

(ちなみに、このミスター・無鉄砲、山の中にいるときは、人を率いているときは、何重にも安全へのプロテクションを重ね、そりゃお見事な、「石橋を100回叩いて渡る」ほどの安全重視派、という前提の元、下の「まさか」話につながります)



「あ、やべぇ。ガス入れるの忘れた」

朝から丸一日、山で動いた後、素朴な温泉で温まり、すっかりリラックスモードになっていた。さあ、頑張って4時間の道のりを帰ろう、渋滞ないといいねぇ、といいながら、コーヒー買ったコンビニの駐車場で、ミスター・無鉄砲は、最初の不穏な一言をつぶやいた。

「よし」と、さらに独り言を言うと、左折し、車を発進させる。

誰もがガソリンは「もう半分」と考えるに違いない!と思いこんでいた私が、あえて、ミスター・無鉄砲に確認することもなく、「ガソリンが半分くらいなくなって、だから、町に戻って給油して帰るのだろう」と勝手に判断したのも、無理はあるまい。

だって、そこから、次のガソリンスタンドがありそうな街までは、くねくねと、街灯もない真っ暗な裏道を数十キロ、山越え、なのだから。

ところが、道はどんどん登って、どんどん細く、どんどん寂しい風景へと変化していく。

「???ねえ?どこ向かってるの?ガソリンスタンド、この先にあるの??」

「ないよ。街は逆方向だもん」と、無鉄砲男。

ええっっと、ガソリンはあとどのくらい?と、運転席を覗き込むと、


げっ、半分どころか、Eランプついてるじゃーん。


そう、このミスター・無鉄砲は、あろうことか、「エンプティランプはさっきついたばっかりだから、きっと数十キロ先の小田原まで大丈夫。だって、街へ戻る道、混んでたし、面倒くさいじゃん?きっと大丈夫~」

と、判断していたのだ。慎重派の私からしたら、まさか!、な、脳天気で楽天的な判断じゃないだろうか。

こんな真っ暗な、人気のない道で、車止まったらどうすんの。
私、明日用事あるし、ヒッチハイクして、ひとりで帰るからね。

と、私の冷たい視線と重い空気をようやく察し、

あ、もしかして、ヤバイ?

と判断した(かもしれない)彼は、

BGMもエアコンも、「余計なガス使うといけないから」と消し、
無駄話もやめ、
姿勢を正し、
ハンドルを10時10分の位置にきっちり持ち替え、

なるべくアクセル踏み込まないように、そろりそろりと進み続ける。

途中、登り坂が続いたり、
エンジン音が、ふっっっ・・・と軽くなるたびに、寿命を縮ませ、

いやいや、「何事もイメージトレーニングが大切だから。ガソリンスタンドでほっとしている姿を想像するんだ!」と、それぞれの脳裏にその姿を一生懸命思い描きながら、

極度の緊張感漂う車は、
遙か遠くの街明かりを眺めながら

野を越え
山を越え
峠を越え

もういい加減

コンビニで買ったものの手つかずのコーヒーがアイスコーヒーかと思うくらいに冷め切って
寿命が1時間くらい短くなって、
胃に穴が開きそうに気持ち悪くなった頃、

天国の明かりが・・・またの名を、ガソリンスタンドが、箱根の山奥に現れ、ふたり、固い握手でその出現と自分たちの無事を喜び合ったのだった・・・。



後で詳しい人に聞いたら「高速のサービスエリアが50キロごとだから、エンプティランプがついてから、そのくらいは走るようにできているよ」と聞き、

なああああああんだ、あんなに心配する必要なかったのか、と安心したが



今回の教訓は、

「エンプティランプは怖くない」


・・・じゃなくて、

「今後、、ミスター・無鉄砲の車に乗るときには、出発前のガスチェックを絶対に忘れないこと」



「もうダメダメダメ無理無理無理、と思っても、そこからの底力は意外にあるものなので、何事も、早々に諦めず、希望を持って進むこと!」

という、

どこかの、安い人生教訓本にでてきそうな、超ポジティブ思考な人生論、で、まとめておきたい。

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